メールをいただきました。
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第85回のマレニヨムに以下の事が内容としてありましたが
- 「たとえば株主は、法律上、名目上、企業の所有者と言うことになっている。
だがしかしその権利は今や、かなり限定的である。
株主の会社に対する権利をここで書き出してみると、・会社の定款を投票によって改正できる。
・会社の取締役を選出でき、あるいは解任できる。
・会社の消滅(吸収合併される)や資産の大部分の売却について、投票する権利をもつ。
と、ただこれだけである。
残余に関する決定権は殆どない。
(→つまり所有していない) 配当額の決定、投資や買収の決定、管理職の採用や報酬の決定、商品の価格設定などといった問題には、まるで影響力を持たない」
- ここで、質問があります。
私は公認会計士を目指し商法を7教科のうちの1教科として勉強していますが少し引っかかることがあります。
まず、上記の3つの権利ですが
- 定款変更:342条、343条
- 取締役の選任解任:254条 257条(280条により監査役にも準用されている)
- 会社の合併、営業譲渡:245条(←これに関しては「資産」ではなく「営業」の全部または重要なる一部の譲渡) となるわけですが、その他にも株主の権利は種々存在します。
大きく分けて次の2つのカテゴリーに分類されます。
それと株主の基本的権利は230条の10の規定により定款によって拡大されることが多々あります(縮小は許されないと解されている)。
1.共益権:
会社経営に参加する権利議決権:241条 これが一番重要な共益権 代表訴訟提起権(267条:6ヶ月前から継続して1株さえもっていれば行使可能な権利) 各種訴権(247条 252条 280条の15 380条・・・)ETC
2.自益権:
株主自らのために行使できる権利利益配当請求権(293条) 中間配当請求権(293条の5) 残余財産分配請求権(425条)新株引受権(280条の4)ETC まだまだ他にもたくさんの権利がありますが重要どころはこのようなところです。
そして、配当に関しては株主総会にて利益処分計算書の承認が必要となることから、配当の決定に際しては取締役の決定を覆すことも可能となります。
次に投資や買収の決定に関してはこれが「他の会社の営業全部の譲受け(245条第1項第3号)」に当たれば株主総会の承認が必要となるため、株主も政策に関与が可能となります。
次に報酬の決定に関してですが確かに末端の管理者の報酬に関しては関与できませんが、取締役と監査役の報酬に関しては269条(取締役)、279条(監査役)により定款に定めがない場合、株主総会によって決定されることになります。
ちなみに定款に関しては上記で書かれていたように株主が、関与可能です。
商品価格の決定に関しては、そもそも株主が決定すべきではない。
なぜなら、株主は経営能力が乏しく、経営の専門家たる取締役に会社の合理的運営を委託しているからです(254条第3項)。
これ故に取締役は受託責任を遂行できなかった場合は、損害賠償や責任追及による解任がなされるわけです。
以上の点に関し、疑問がありましたのでメールさせてもらいます。
でもまあ、日本の株式会社においては系列による株式相互持合、法人株主化による浮動株の減少により、一般株主の影響が小さくなっていることは確かです。
これゆえ、株主はインカムゲインよりキャピタルゲインを目的として行動することになるのでしょう。
(まあ、経営学財務論においては、投資家のリターンはインカムゲインとキャピタルゲインの総和となりますので、結局は同じなのですが。←配当無関連性命題) 長くなりましたが、この辺りにさせていただきます。
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--※※ ええっと、長いメールをありがとうございました。
専門的なことはよく分かりませんが、この「組織の経済学」においての株主の立場というのは、債権を持っている(金を借りている)銀行とか、社債や劣後債を購入した人、従業員、仕入先、その他と比べて影響力順位が最後に来るという風な意味合いで展開します。
たとえば企業が欠陥商品を販売して、消費者が大きな被害を受けた場合、被害者に対する支払いや回収が最優先され、その結果企業が倒産したとしても、会社の財産は債権や従業員の給与支払いに優先的に分配され、株主までまわってこない、、、てな感じです。
そして通常時においても企業の経営者は銀行や従業員の意向に左右され易く、株主の要望に応え難い。
それどころかなるべく株主から自由でいようと苦心し、逆に株主は影響力を失わないように結束する。
そういう話がまた出てきますので、よろしくお願いします。