従業員持ち株制度(ESOP)

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 1980年代末までに、一万社以上のアメリカ企業が「従業員持ち株制度(ESOP)」を採用したが、正式にはそれは従業員の年金制度であった。

 

 ESOPでは会社は自社株の一定数を取得して、この制度に信託する。

 

 従業員は毎年個々にこれらの中から一定割合を分配され、辞職時まで保有する。

 

この制度で自社株全部が従業員の手に渡ったケースもある。

 

 この制度によって敵対的買収を防ぐことができると言うことや、企業の所有者が引退したときに株式を他社に譲り渡してその企業の雇用が不安定になることを防げるということもあって、ESOP制度は広まった。

 

 不採算会社を閉鎖して従業員を解雇するよりも、その会社の株式をESOPで従業員に渡してしまうということもでき、その結果不採算会社が立ち直ったというケースもある。

 

グループ・インセンティブの有効範囲

 

 企業が従業員個人とインセンティブ契約を結ぶ場合より、グループとインセンティブ契約を結ぶ場合の方が、効果が上がる場合がある。

 

 その理由としては、1)チームとしての業績は測定できても、個人の業績は測定できない。

 

2)労働者グループの方が、雇用者より個人の業績を判断する材料をたくさん持っている。

 

そしてグループとして実績を上げねばならないので、他人に対する監視や効率的な仕事の分担が上手く行く。

 

3)雇用主が指揮して労働者を動かそうとすると、個々の労働者が雇用主に対して不満を持ち、反抗することがよくある。

 

だがそれをグループに任せると、各人はより高い満足感をもって働くことができる。

 

 要するにボス、つまり仕事を指揮している者が平等に仕事を割り振っているつもりでも、部下からみると平等でないことが多いし、要領が悪いことも多い。

 

 だから、ボスが変わって仕事内容があまりよく分からない人間や、放任主義の人間がボスになると、仕事が一辺に楽になったり早く終わったりする。

 

(ボクの働いているところでもそういうことがかつてありました)。

 

4)グループ・インセンティブでは、グループのメンバーが互いに助け合い、カバーしあい、様々な形で手を貸し合うことができる。

 

 そして仕事をしない者に対しては、グループが規範を守らせるようなインセンティブが働く。

 

 ただこういうグループに対するインセンティブ契約は、やはりインフルエンス活動をおこさせる場合がある。

 

 業績評価が適正であるかどうかは、非常に主観的なものにならざるを得ないから、その解釈によってはグループ間で軋轢を生じる。


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給与の公平性

 

給与の公平性

 最後に、グループ内で賃金・待遇に差を付けることは、注意深くあらねばならない。

 

 いかなる給与制度であれ、公平感の有無は重要な問題である。

 

 従業員が公平感を失うと、それは直ちに不満となる。

 

 だがこれらは非常に微妙な問題であり、少なくとも同程度の業績を上げていると考えている者には等しく同様の給与を与えなければならない。

 

 それは結局、より働いている者の給与を削り、実際には大して働いていないが「働いているつもり」の人間に余分な報酬を支払うということになる。

 

 そういうわけで給与は一般的に「非公開」とされ、無用な軋轢を生むのを避けようとするわけである。

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