チーフ・エグゼクティブ・オフィサー
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アメリカ大企業365社のCEO(経営責任者:昔で言う社長)が、1990年に手にした報酬は、1980年代の十年間に212%も増加した。
これは工場労働者の賃金上昇率53%の四倍の伸びであり、エンジニアの報酬増加率と比べても約三倍の伸びであった。
ビジネス・ウイーク誌の調査によると、アメリカのCEOの年収の平均は約120万ドルで、ストック・オプションなどの制度を通じての長期報酬は195万ドル(2億円強)に達するという。
しかし巨大企業のCEOの報酬はこんなものではない。
たとえばユナイテッド航空の親会社UALのCEOは、1,830万ドル。
そしてスポーツシューズ会社のリーボック社のCEOは1,480万ドル。
アップル社のスカリーは1,670万ドルで、タイムワーナー社の会長兼CEOはなんと7,800万ドルの報酬を得た。
これらの高額報酬の殆どがインセンティブ契約に基づく業績給であるが、フォーブスのリストにあった25人の高額所得経営者の報酬の平均は、1,200万ドルにものぼった(全て1990年のデータ)。
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アメリカ企業の特殊性(CEO報酬の国際比較)
売り上げ規模300億ドル程度の日本の大企業のCEOの年収は、平均的労働者の収入の約17倍であった。
そしてフランスやドイツの同等企業では、CEOは労働者の約24倍を報酬として受け取っていた。
ところがアメリカの場合はそれがなんと109倍にもなり、特異的である。
これはちょうど地球の直径と太陽の直径ほどの差。
これは同じ規模の売り上げの石油関連企業のCEOの報酬を比べてみてもよくわかる。
というのもアメリカのエクソン社のCEOは550万ドルを得ていたが、競争相手であるオランダのロイヤル・ダッチ・シェル社のCEOの収入は50万ドルでしかない。
ソニーでは取締役全員の「合計」で、820万ドルでしかない。
中小企業のCEOの国際比較でも、アメリカ企業のCEOの報酬平均は60万ドルであるのに対し、カナダや日本やヨーロッパのCEOの年収はその半分から三分の二ほどになっている。
つまりアメリカ企業のCEOの報酬は、他のどんな地域のCEOの報酬の何倍も高い。
しかしアメリカ企業のCEOの報酬がこれ程膨張したのは、1980年以降のことである。
1960年~1980年にはCEOと労働者の賃金比率は日本やヨーロッパにもっと近いものだった。
アメリカ企業では1980年代からCEOに対するインセンティブ報酬契約が盛んに導入されたのだ。
しかし、その後CEOなどの管理職に対する報酬だけが一気に増大した(香港なども同様)。
CEOなど企業全体を動かしている人間の業績測定は比較的容易である。
というのもそれは収益率だとか株価だとか営業利益とかいう数字でハッキリ現されうる。
だから、インセンティブ契約も結びやすい。
だからドンドン給料が上がった。
だからヨーロッパや日本で管理職に対するインセンティブ報酬制度が大規模に導入されれば、ヨーロッパや日本にもそういう高額報酬CEOが登場しないとも限らない。