インセンティブ報酬の原理
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雇用主の利益を図って従業員が費やす努力の水準をe、その私的費用をC(e)とする。
努力水準eが示すのは、企業の業績向上に役立つために従業員が行うあらゆる種類の行動、たとえば接客態度の向上、業務に役立つ勉強、業界動向や新技術の研究、市場調査や分析、企画の提案、部内作業の効率化などなどの水準である。
そのために支払った授業料や時間、業務の不愉快さ、失われた利益や名声、その他雇用主の利益向上と引き換えに失われる全てにかかわる費用をC(e)とする。
企業の利潤P(e)を、従業員の努力水準eに依存する関数であるとすると、eが高ければそれは高い利潤をもたらすことになる。
努力水準eはなかなか数値化できないので、代わりに労働時間や仕事に費やしたエネルギー量などで数値化することになる。
eを努力水準、xを需要水準(確率変数)、yをその産業全体に対する需要水準とすると w(賃金)=α(基本給)+β・(e+x+γy) というモデルを立てることができる。
このモデルにおいて歩合給を決めるのは「本人の努力」と「店全体の売り上げ」と「その産業全体の状態」である。
このときのこの式のβを特に「インセンティブ強度」という。
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インセンティブ契約の実現可能性
従業員に与えるインセンティブ報酬のモデルは eを努力水準、xを需要水準(確率変数)、yをその産業全体に対する需要水準としたとき w(賃金)=α(基本給)+β・(e+x+γy)であった。
もちろんこのような線型の式で表されるような報酬体系以外にも、世の中には様々な形のインセンティブ契約が存在する。
たとえばセールスマンが一定以上の業績を挙げたときのみに支払われる「成功報酬」である。
商品やサービスを売った分だけ歩合を与えるというやり方で、モノを仕入れて売るだけの販社によくあるパターンである。
だがしかしこういう形式の契約には、大きな欠点がある。
それは「最初につまづいて、その成功報酬をもらうための規準となる業績に達しない見込みになるや否や、従業員のインセンティブが急激に落ちる」ということである。
与えられたノルマや達成水準に達しなければボーナス無し、という条件下では、達成率30%も達成率99%も同じである。
だから、期末に達成率が100%を越えなさそうだとわかった時点で従業員は努力を止めて転職先を探し出し始めてしまう。
だからそういう契約ではなく、線型の歩合給の形でインセンティブ契約を結ぶというのは、売り上げを伸ばすために一様なインセンティブを与えるために有効なのである。
線型の歩合給形式のインセンティブなら、期末に達成水準に達しないと分かった状態でも、次に一つ商品を売ったときに成功報酬を受け取れるならセールスマンは商品を売ろうとするからである。
線型報酬関数に基づくインセンティブ契約は、そういうわけで従業員に一様なインセンティブ・プレッシャーを与えることができ、インセンティブ契約の最も良いモノの一つであると考えられる。