労働契約は、暗黙の契約を含む
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労働契約は、状況によって労働内容が様々に変化するため、完全に書き記すことができないことが多い。
通常の財やサービスの取引であれば、何を何個、いくらで受け渡す、というような明確な契約が結べるが、労働契約の場合は、そういう風になっていないことが多い。
なので「完備契約」が結べず、不完全な契約になる。
だから「勤務時間内の業務に関することに限って、労働者は指揮者の命令どおりに働く」というような内容の契約が結ばれる。
これを「関係的契約」と呼ぶ。
そして雇用契約は不完備な契約なので、そこにはそれを補うための様々な「暗黙の契約」というものが組織内にできてくる。
それは「企業文化」だとか「不文律」だとか「慣行」といったもので、裁判所などの外部の第三者によってそれを強制できないような「自己拘束的(セルフ・エンフォーシング)」なものである。
たとえば社員が懸命に働いたことに対するボーナスは、それが妥当であるかは外部のモノには分からない。
働いているかどうかはモニターしにくいモノであるし、それに対応するボーナスの支払いが適当であるかも第三者には判断しかねる。
暗黙の契約の機能が働くためにはだから、労使双方がそれによって共に利益があるという条件が必要になってくる。
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暗黙の契約が成り立つ理由
暗黙の契約とは、契約に明文化されていない内容だ。
このが成り立つには、一定の利益が労使間にないといけない。
たとえば企業特殊的人的資本を付与された社員が、転職せずに会社に残る。
これは企業がその分の多くの報酬を、その社員に与えるという暗黙の契約がそこにあるからで、それは企業にとってもその人的資本を持つ社員にとっても共に利益があるからだと考えられる。
特定の企業にあってのみ価値のある特殊的な人的資本というのは、一般社会では価値があるとは見なされないから、転職したら現在より低い報酬しか受け取れなくなる。
だからそこに「特別な訓練を受けたモノは企業に残る」という暗黙の契約が結ばれ、効力を持つ。
つまりこのような取り決めは、レント或いは準レントの存在を必要とするのである。
今週の・・・
★レント: この場合は訓練を受けた者が他の従業員より高い給料をもらうその「技能手当分」の金、或いは待遇。
企業にとっては、訓練された従業員を高いスカウト料を払って見つけてきて雇用するより、自社の社員を訓練して技能を身につけてもらった方が結局は安上がりになる。
★準レント: この場合は訓練を受けた従業員が企業を退職して再就職する時にもらえる賃金と、現在受け取っている賃金の差額、あるいは待遇。
企業にとっては新しい人間を採用し訓練するための費用と現在雇っている訓練された従業員に与えている報酬との差が準レントになる(という理解でいいのかな?)。