セールスマンと歩合給

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 従業員に支払われる報酬には、固定給と歩合給がある。

 

もちろんこれらは単独で用いられる他にも、給料の内に「固定部分」と「歩合部分」という形で用いられ、出来高給などとも呼ばれる。

 

 企業が出来高給を用いて雇用する対象は、小売り販売員や外回りの営業マン(セールスマン)などであるが、それはなぜかというと、これらの職種はモニタリングが難しいからであろう。

 

 同じフロアで仕事をしている従業員に関しては、上司や同僚、あるいは部下といったたくさんの者によって各従業員の働きぶりを監視することができるが、出先の販売所の販売員や外回りが基本のセールスマンなどといった場合はその働きぶりが監視できない。

 

 だからそう言った仕事をする者にしっかりと働くインセンティブを与えるには、高率の歩合給を設定するしかない。

 

 もちろんそれは売る商品の価格にもより、たとえば原子力発電所の建設の受注などといったとんでもない巨額な受注額で、しかも年に一本か二本の契約くらいしか取れないような場合では、このような歩合給を設定しても意味はない。

 

 そのような場合はそれを担当する営業チームに対して何らかの業績給を支払うことになるが、それは歩合給とはまた違ったモノと考える方がよいだろう。

 

 歩合給を設定する場合には、インセンティブ強度原理が役に立つ。


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インセンティブ強度原理

 インセンティブ強度原理に基づけばまず、「①追加的努力から生じる追加的利益が大きければ大きいほど、出来高給は高くすべきである」ということになる。

 

 何らのインセンティブも与えない状態で月に100個売れる商品やサービスがあった場合、あるセールスマンが月に100個その商品を売っても出来高給を割り増しで支払う必要はない。

 

 だが別のセールスマンが何らかの努力を行って同じ商品を150個売る場合には、余分の50個に対してより高率な出来高給を支払うべきである。

 

というのも、それが他のセールスマンに対してより多くの商品を売る強いインセンティブになるからである。

 

 次に「②従業員のリスク回避度が小さい、つまりリスクを背負う覚悟があるほど出来高給は高くすべきである」。

 

 従業員がリスクを避けて確実な仕事だけを選ぶようになれば、新しい事業も生まれないし、他の新しい事業を手がけている企業にそのうちその「確実な仕事」も徐々に奪われてしまうことになる。

 

 さらに「③従業員の業績が正確に測定でき個人の努力を反映するものであれば、出来高給は高くすべきである」。

 

 従業員の業績を正確に測定すると言うことは非常に難しいことであり、通常はそんなことが簡単にできるわけではないが、しかしそれがハッキリするような場合には、それと報酬が比例するようにしなければならない。

 

 さもなければ「働く者が損をする」というような企業となり、従業員に努力するためのインセンティブが失われてしまう。

 

 最後に「④従業員のインセンティブ反応度(要するに金を出すと言えば働き金を出さないなら働かないという態度)が強ければ出来高給は高くすべきである」。

 

 これは、お金に対して素直に反応するような文化を持つ国や地域においては、インセンティブ強度を強くした業績給制度を導入すべきであり、逆にお金の多寡で働き方が大きく変わらないような文化をもつ場所や企業では、逆にお金以外の別のインセンティブ報酬制度を考え出さねばならないということである。

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