年功序列型賃金は、保証金?

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 エドワード・ラジアーによると、年功序列型賃金の仕組みは、従業員の怠慢を防ぐ手だてとしての「保証金」であるという。

 

 たとえば従業員が怠けるのは、怠けることによって何らかの便益を受けるからである。

 

 正規の労働時間内に手抜き作業を行い、それを「残業」して行えばより高賃金を得ることができる。

 

 だから、そのために労働者は怠ける。

 

 だがそういう怠慢行為を発見したときに、企業が従業員を解雇するとすると、企業は従業員の怠慢によって失った便益を取り戻すことができなくなる。

 

 だから失う便益を充分上回る「保証金」を従業員に課すことができ、怠慢行為が発見された従業員を解雇する時にそれを没収できれば従業員のモラルハザード対策にもなるし、企業は従業員の怠慢行為によって損をしない。

 

 若年者の給料が安いのは、そういう保証金がさっ引かれているせいなのだ、、、というわけである。


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「定年」の機能

 年功を積んだ従業員には、本人の生産する価値以上の支払を約束する制度があったとする。

 

 つまりベテラン従業員には、転職して同種の職に就いた場合に得られるよりも多い給与を支払うという制度である。

 

 そして一方年少者に対しては、限界生産力を下回る給与しか支払わないという制度を採用したとすると、企業としては支払う給与総額はそういう制度を採用する前とさして変わらないはずである。

 

 この時、自分の働いた価値より多くの収入を得る人間やそれに近い年功を積んだ人間とって、それは保証金と同様の働きをすることになる。

 

 怠慢行為や背信行為でクビになった場合、再就職しても確実に給料は減ることになる。

 

 だから、その差額が「保証金」ということになるのである。

 

 つまり年功序列型賃金というのは、従業員の怠慢を抑制し、業務の効率性を維持するために役立っているわけである。

 

 だが驚くべきことにこの方式によって企業が効率的な運営をするには、強制的な退職規定(つまり定年制)が必要になるのである。

 

  というのもこの方法には、大きな欠陥があるのである。

 

 その欠陥とは、年長者が企業にしっかりと居座ってしまうと言うことである。

 

 若輩者は低賃金に不満があればどんどん辞めていってくれるが、年輩者は自分の働き以上に稼げるわけだから、なるべく企業に長く居座ろうとする。

 

 年長者が長く企業に居座ると、当然効率性は落ちる。

 

というのも年長者は働き(生産性)に見合わない高い報酬を受け取っているからである。

 

 企業としては従業員に対して生産性に見合った報酬を支払いたいが、諸般の事情からたいていそれより高い報酬を支払っている場合が多い(この話はまたどこかで出てくる)。

 

が、年功序列型賃金体系では、さらに高い報酬を支払うことになる。

 

 そんなことを長く続けるわけには行かないから、そこで強制的な退職規定(つまり「定年制度」)が必要になってくるわけである。

 

 定年制というのはある意味、効率性を維持するための制度である。

 

 だから、効率性を求められない組織(たとえば宗教団体や公益団体・政党や公務員)ではなかなか採用されない。

 

 定年制を採用しているかどうかは、その組織が合理的(経済的)な組織か政治的な組織かを見分ける1つの目安かも知れない。

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