取引が継続する場合の評判
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商取引の発展には、ビジネスに関わる人々の間で、互いにかわした合意が履行されることに対する「信頼関係」が成立する必要がある。
この契約遵守を保証する最も重要なメカニズムとして「評判」がある。
ゲームの理論を用いて「評判」を少し検討する。
取引のタイプと意志決定
多くの経済的取引においては、予期せぬ出来事がしばしば起こる。
そのような場合において意志決定がどのように行われるかを分類してみると、
1)スポット市場型取引
短期契約、契約期間が短いので、予期せぬ出来事が発生する確率 が小さい。
またアクシデントが発生した場合は、取引に関わった 双方の交渉によって解決される。
2)ヒエラルキー、権限関係
: 関係的契約。
上司と部下という役割分担を決め、上司が指示し責任もとる。
契約時間内においては「通常の限度内」という条件のもとで、部下は上司に従うことを要求される。
また家を建てたりする場合も、施主は大まかな要求はできるが細 かな判断は建築家や現場主任に一任することになる。
こういうのも「関係的契約」になる。
ということになる。
関係的契約において部下側にあたる者は、上司や裁量を認められた責任者を一定の範囲内で「信頼して」そういう契約を結ぶことになるのだ。
しかし、これについて少し考える。
まずこういう関係的契約というのは、契約内容が詳しく正確に記述できない契約であるという前提がある。
そして片方の裁量権をもつ側が適正な判断や支持を行ったかという判断は、裁判のような場では証明しにくいが、契約当事者には何となく判断がつくものである。
これを仮定としておく。
信頼ゲーム
---{表1}
(意志決定者)信頼に応える、または、 信頼を裏切る。
(委託者) 委託する、または、委託しない。
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信頼ゲーム
取引機会が生じるたびに、委託者(部下側)が取引を委託するかどうか、意志決定者(上司・請負者側)に申し出をすることができるとしよう。
この場合委託者側には戦略として、二つの選択肢がある。
それはつまり「委託するか」「委託しないか」である。
また意志決定者側には同じく二つの選択肢があり、それは「委託者の信頼に応えるか」「委託者の信頼を裏切るか」と言うことである。
{上表1}の2×2マスのマトリックスの中の記号は、前者が委託者の利益、後者が意志決定者の利益である。
第1行1列の升目のV,Vは、意志決定者が委託者の信頼に応えれば、委託者も意志決定者も等しくVだけの利益をあげることができるという意味である。
そして1行2列では、意志決定者の裏切りによって委託者は-Lだけ損をし、意志決定者はVに加えてGだけの利益を手にするということである。
(V、G、Lは正の数値) 委託者が委託しない場合は取引が成立しないので、双方とも利益は0である。
だがこの0は分析が簡単に済むように便宜的に決めた基準点であって、得も損もしないという意味ではない。
取引を行わない場合、損になることだって考えられる。
だからVが正であると言うことは、取引をすれば取引をしない場合より双方にとって利益があるのだ、、、という意味である。
さてVがより大きくなると、それだけ取引する価値が増えることになる。
信頼の申し出とそれに応える見返りが大きくなることになる。
またGが正であることも、意志決定者にとって「短期的な利益」がそこにあると言うことを指し示す。
背任行為がバレて気まずい思いをしたとしても、それを上回る利益があるものと想定している。
Lが正であることは、信頼の申し出にリスクが伴うこと、すなわち委託者が何らかの損害を被るという意味である。
そうして仮にこのゲームが一回限りのモノであったとすれば、意志決定者は依頼者の信頼に応えてVだけの利益を上げるよりも、より多いV+Gだけの利益を得る方が(つまり裏切ったほうが)望ましくなる。
そしてその場合、依頼者は意志決定者が裏切ることがわかっているから依頼しない。
つまりこの結果この取引は行われず、取引が成功裏に行われた場合の利益Vは獲得の機会を失う、、、ということになる。
今週の・・・
テキストで、レントの説明より先に効率性賃金や評判をどうしてしているかというと、実例を先に挙げているんですね、これ。
今読み返してみて初めてわかった。
因みに巻末の用語解説には、「レント:経済活動の見返りとして受け取る収益で、経済活動に資源を引き寄せるために必要とされる最低収益を超えた分に相当する」「準レント:資源を経常的に利用し続けるために必要とする最小収益の超過分を指す」と書かれています。