株式公開企業の所有者は誰か?
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現代の複雑な所有構造を考えると、株式を公開している企業の所有者は一体誰だ? ということになる。
そのような企業の残余コントロール権と残余請求権をしっかり握っている個人なりグループなりが、果たして特定できるのか。
(1)株主: たとえば株主は、法律上、名目上、企業の所有者と言うことになっている。
だがしかしその権利は今や、かなり限定的である。
株主の会社に対する権利をここで書き出してみると、
- 会社の定款を投票によって改正できる。
- 会社の取締役を選出でき、あるいは解任できる。
- 会社の消滅(吸収合併される)や資産の大部分の売却について、投票する権利をもつ。
と、ただこれだけである。
残余に関する決定権は殆どない。
(→つまり所有していない) 配当額の決定、投資や買収の決定、管理職の採用や報酬の決定、商品の価格設定などといった問題には、まるで影響力を持たない。
(2)取締役: 残余コントロール権を持つものと言えば、それは取締役ということになる。
だがその取締役も企業が倒産した場合に残余を請求することはできないから、つまり残余請求権は持たないことになる。
また企業に対して何某かの利害関係にある者、すなわち「ステークホルダー」の存在も所有権を複雑にする。
ステークホルダーは企業に投資を行っていたり、重要なお得意さんであったり、大量の注文を発注してくれる大企業であったり様々な立場から、企業組織の運営に影響を及ぼしてくる。
だからそれらに対して明確な優先順位を割り当てるというのは難しい。
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誰のモノか分からないから、インフルエンス活動が活発になる
従業員も残余のコントロールや残余の請求を企業に求めてくる存在である。
企業が儲かればボーナスを支払えと請求するし、様々なインフルエンス活動を通じて不必要な人材を雇ったり、利益の上がらない部署の存続などに残余を振り向けようとする。
有能な従業員はバカ高い報酬を要求するし、そうでない従業員もそれなりに高い賃金での雇用を管理職に求めてくる。
そういうわけで企業の取締役を任命するのは確かに株主であるが、実際にそういう様々なインフルエンス活動のターゲットとなるのは取締役や経営者である。
ステークホルダーや何の権利持たないのに企業に影響力を及ぼすような人物のインフルエンスの対象もやはり取締役や経営者である。
もちろん取締役や経営者も、従業員の猛反対する経営を行うのは難しい。
残余のコントロール権と残余請求権という所有の概念も、どうやら所有をうまく説明できないものらしい。
今週の・・・
誰のモノかわからない→ 誰も責任をとらない→ 個人が自己利益の拡大を図る→ 会社の資産が形成されず、赤字と黒字の行ったり来たり。