企業特殊的人的資本と雇用
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内部労働市場(インターナル・レイバー・マーケット)の特徴
- 1)長期雇用関係
- 2)雇用のための限られたエントリー・ポート(就職門)
- 3)企業内キャリアパス4)内部昇進
企業特殊的人的資本と雇用
内部労働市場が生じるような組織では、長期的用が大きな意味を持つ。
というのも長期雇用を前提とすると、企業特殊的人的資本への投資が有利となる場合が多いからである。
企業特殊的人的資本、というのは要するにその企業組織内部でしか通用しない技術やスキルを持った人材のことであるが、このような技術やスキルは「長期雇用を前提としていなければ修得が促進されない」。
ある人間が、転職によってキャリア・アップを図ろうと思うのなら、一つの企業内でしか通用しないような技術やスキルより、より多くの企業や職場で有効な技能やスキル、つまり「汎用技能」を修得しようとするだろう。
一方別の人間がある企業の中で出世したり昇進したりしようとするなら、たとえ汎用技術/スキルでなくても修得することに価値を見いだすだろう。
だからある企業でのみ価値のある技能やスキルを持つ人材(人的資本)を確保するには長期雇用が前提でないと難しいし、そのようなスキルを必要とする企業や組織であれば、長期雇用が当然となる。
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効率性賃金と雇用
長期雇用の利点・その2は、長期雇用であれば効率性賃金の効果が高まるということである。
長期的雇用を前提とすると、従業員は長期的な視点によって現在のポジションを評価することになる。
「今は給料も安いし権限も何もないが、何年かたったら給料も少しはあがるだろうし権限も持つことができるだろう」そう考えて働くことになる。
だから従業員は現在今もらっている報酬に加え、将来受け取る報酬(あるいはレント)に対する期待をも受け取ることができる。
「均等報酬原理」の項にもあったが、長期的雇用を前提とした場合は短期の業績向上インセンティブは弱まり、長期にわたる好成績を求めるインセンティブが強まる。
企業がまるで「歩合」のような形でインセンティブ報酬を支払ったり、高い売り上げを上げた者が「総取り」になるような仕組みを作ると、従業員は目先の売り上げのためにのみ自分の時間や努力を費やし、すぐに結果がでないような仕事はしなくなるだろう。
目先の売り上げのために企業の評判を落としたり、同じ会社の他のセールスマンのことなど考えずに、とんでもない格安価格や料金を提示したりすることだろう。
長期雇用における効率性賃金は、企業の評判を維持し、暗黙の契約をスムーズに履行させる。
長期雇用と評価
内部労働市場が生じるような組織で長期的雇用が効率的である三つ目の理由は、「長期に渡って業績をモニターできるので、長期目標への従業員の貢献度を正確に評価することが可能になる」ということである。
そのことが短期的な業績評価システムでは落としやすい将来の評判を落とさずに済むことになる。
短期契約ではどうしてもそういう目先の業績をあげるために将来の業績悪化など省みずに行動するようなことが多い。
将来に取っておくべき資源を現在消費すれば、現在の業績はとにかく上がる。
だから資源や労働力の酷使や、粉飾をしまくって業績をあげるとかいう事態が起こりやすいのである。
まとめ
長期雇用のメリット
- 1)企業特殊的人的資本への投資が可能となる
- 2)効率性賃金の効果が高まる
- 3)長期目標への従業員の貢献度を評価することが可能になる