所有と財産権記事一覧

 取引が不可能な財、誰のモノか帰属がハッキリしない財などの「不確かな財産権」から発生したインセンティブ問題は、様々な名前で問題にされる。 たとえば・共有資源の問題・公共財の問題・フリーライダー問題・共有地の悲劇といった問題などがそうである。 これらの問題の基本的な構図は、「大勢の人々が一つの共有資源に対する利用権を持つ時、資源の過剰利用インセンティブが生じる。そしてその共有資源のコストを分担して提...

 漁業権とは、その漁場で魚を捕っても良いという権利だ。 魚を捕っても良い権利といっても取って良い量は決められている。 というのも漁業権とは、漁業資源を取りすぎず、漁業資源を維持するために必要な取り決めであって、権利者が乱獲しないという前提で成り立っている。 ただ、現在の資源状況をどう判断し、将来の漁獲量をどう推定して決めるかは、ハッキリとしたデータでは示しにくい。 だからそれぞれが自分の事情と照ら...

 通常の財(商品)の「所有権」は売買可能である。 売買可能な所有権であれば移転(持ち主の変更)は簡単だから、コースの定理によってその財はそれを最も高く評価している者の手に渡ることになる。 だがしかし、全ての財の所有権が取引可能であるわけではない。 所有権に対して様々な制限が課せられていることも多いし、所有権がハッキリしない場合も多い。 所有権が取引不可能でまた不確かな時、資産はそれを最も必要とし、...

 カリフォルニアと言えば大農業地帯である。 日本の米作農家を脅かしているカリフォルニア米は、もちろんカリフォルニアで造っているのだ。 しかし、実はカリフォルニアの殆どは砂漠なのである。 そんなカリフォルニアでなぜ、水資源をとんでもなく消費する米を作ることができるのかと言えば、一つには冬の間北部に山ほど降る雪の雪解け水をダムでせき止めて使っているからである。 そしてさらにその水を一単位あたり3.5ド...

 所有権などの権利の取引費用が充分低い場合、つまりある程度のお金があれば自由にその権利が買える場合、その権利の最初の持ち主が誰であろうとさほど問題ではない。 だがカリフォルニア州の水利権のように水の融通が禁止されていて、その権利も譲渡不可能な場合は、最初にその権利がどこにあるかが非常に重要な問題になる。 つまり最初に不適切な権利の割り当てを行えば、それは取引や市場メカニズムでは調整されないため、非...

 所有権の割り当てと保護は、取引の効率性に大きな影響を及ぼす。 不完備契約/交渉費用/モラルハザード/インフルエンス・コスト等は、全ての経済関係において非効率発生の原因となりうる。 では一体誰が資産を所有すべきなのであろうか? 取引の属性に基づいた資産所有と言うモノを考えてみる。資産の特殊性とホールドアップ問題「特殊性を持つ」ということは、経済学では自由市場で取り引きされる価値より高い価値を持つと...

 ホールドアップ問題とは、相手が身動きできない状態なのを見越して、無理難題を吹きかけてくると言う問題だ。 たとえば年から離れた工場に、鉄道の支線を引き込んで、原材料や部品、完成品などを運び込んだり運ぶ出すと言ったようなケース。 この場合では、支線がつながっている本線の繁盛具合で、支線の利用料金が変わってくる。 すなわち、本線が繁盛しておれば、支線で稼ぐ必要が無いので、割高の料金を鉄道会社が吹っかけ...

 現代の複雑な所有構造を考えると、株式を公開している企業の所有者は一体誰だ? ということになる。 そのような企業の残余コントロール権と残余請求権をしっかり握っている個人なりグループなりが、果たして特定できるのか。(1)株主: たとえば株主は、法律上、名目上、企業の所有者と言うことになっている。 だがしかしその権利は今や、かなり限定的である。 株主の会社に対する権利をここで書き出してみると、会社の定...

第85回のマレニヨムに以下の事が内容としてありましたが- 「たとえば株主は、法律上、名目上、企業の所有者と言うことになっている。だがしかしその権利は今や、かなり限定的である。株主の会社に対する権利をここで書き出してみると、・会社の定款を投票によって改正できる。・会社の取締役を選出でき、あるいは解任できる。・会社の消滅(吸収合併される)や資産の大部分の売却について、投票する権利をもつ。と、ただこれだ...