限られたエントリーポート
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従業員の業績は何度も言うが、完全に観察したり測定したりすることは不可能である。
だから業績給によるインセンティブよりも、昇進トーナメントと言う形でそれぞれの仕事にそれぞれの賃金を対応させ、業績を上げた者を高い賃金に対応した役職に就けるという形で企業は職務配置を行うわけである。
このために企業は入職口を狭く制限する。
たくさん雇ってじっくり見て有能な人間だけ昇格させ、後はクビにするというのは、人件費も膨大になるし無駄も多くなる。
ただし昇進のみでは全ての従業員に勤労のインセンティブを与えることはできないから、そこで企業の業績に応じた「ボーナス」が支給されることになる(業績インセンティブ、均等報酬原理)。
これは一見して無意味な支出のように見えるが、しかしこれは企業が従業員から得た余分なレントを分配する意味合いもある。
だから、このレントを巡ってのインフルエンス活動やインフルエンス・コストの発生を押さえる働きも期待できる。
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限られたエントリー・ポートの問題点
限られたエントリー・ポート(入職口)から社員を雇用し、業績を上げた者を昇進させていくというシステムの政策は、企業の業績の足かせとなる場合もある。
それは企業が全く新しい分野に進出したり、方針を大転換したりする場合である。
新しい分野というのは今までの常識をそのまま持ち込めない場合が多い。
それは実際コンピュータ技術やゲーム産業、あるいはCGメーカーなどといった産業に従事する人間の平均年齢が非常に低いことからもよく分かる。
そう言う場合、このような時間をかけて社員を昇進させるという方法は全く役に立たない。
そうやって昇進させた社員はたいてい歳を取りすぎているし、新業務に関しても知識や判断力を持たない場合が多い。
だが企業がその新事業に力を入れそれを軸に活動を行おうとするならば、そのためのスタッフを外部から雇い入れて重要な地位に就けねばならないことになる。
たとえ内部から昇格させる場合でも、それに適した人間が現在も高業績を上げているとは限らないから、以前の規準では「できの悪い人間」を昇格させねばならないことになる。
しかしそれはそれまでのムラ的な昇進政策を取っていたのを反故にして、「横入り(よこはいり)」を許すことになる。
だから、他の従業員に対して信義違反となってしまう。
客観的な基準によって昇進政策が行われるなら、企業の労働者も納得できようが、主観的な昇進政策が行われるなら、これは「不完全なコミットメント」になってしまう。