機関投資家は、短期で投資する先がない
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日本では主要会社の株式の約70%が他企業や金融機関に保有されていて、経営陣の評価は株価ではなくメインバンクなどによって行われることが多い。
ドイツでは銀行から多額の借金をする見返りに経営陣に銀行から派遣されたスタッフが加わり、監査役として経営を評価している。
銀行借入が株価による資金調達より大きくなれば、経営者は株価をさほど気にせずとも良くなる。
だから、このような状況が作り出せれば企業は経営者に企業のファンダメンタルな価値を強くするような長期的投資をさせることが可能になる。
1990年代のアメリカの機関投資家、インスティチューショナル・インヴェスタや、保険会社・ミューチャルファンド・年金プランなどは、長年行ってきた性急な投機では結局利益が上げられず、株式の長期的保有に戦略方針を改めた。
そうして企業の大株主として、経営者により効率的な経営を行うようにと圧力をかけるようになった。
というのも機関投資家は巨大な金額の投資を行うので、いくらコンピュータとポートフォリオ理論を利用して短期的に効率的な投資を行おうとしても、市場影響力が大きいので思ったほどの収益が上げられなくなったからである。
機関投資家が大量の株式を買えば確かにその株の株価は上昇するが、株価が高くなったからと言ってその株式を機関投資家が売却しようとすると、いっぺんにまた株価が下がってしまうのだから当たり前だ。
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投資のまとめ
金融資本市場が完全であれば、企業家は同じ金利で必要なだけ資金を調達することができる。
お金を借入るときの金利も、貸出すときの金利も殆ど同じ水準である場合、企業の投資は投資する企業家の私有財産の多寡に左右されず、ただその投資が将来もたらすであろう予想収益によって決められることになる。
すなわち金を借り入れて投資しても充分金利が支払え、なおかつ利益が見込める場合には投資が行われ、そしてそうでないときはその投資は行われない。
つまり投資は企業家の財産状況や金回りとは無関係に、その投資が儲かるかどうかによって決められるわけだ。
しかし、これを「フィッシャーの分離定理」と呼ぶ。
では今借り入れた投資で、将来儲けられるかどうかはどう計算するのだろうか? それには「現在価値」という尺度が用いられる。
すなわち金利をrとしたとき、t年後のキャッシュフロー(売り上げからランニングコストを差し引いた粗利益)を(1+r)のt乗で割った数値が現在における金銭価値に相当する。
たとえば十年後までに召還しなければならない借入金が一千万円あったとしたら、一年後から十年後までの予想売り上げを計算し、それをそれぞれ(1+r)^tで割った現在価値を全部足したときにそれが一千万円以上あれば良いことになる(超過分が儲け)。
さて資本の調達には「負債(借入金)」と「エクイティ(自己資本)」という二種類の方法があるが、企業や投資家が自由に無制限に投資が行えるなら、その比重はその企業の市場価値には影響を及ぼさない。
これを「モジリアーニ=ミラーの定理」という。
フィッシャーの分離定理が適応できる場合、市場における投資は「効率的になる」。
というのも全ての企業にとって、投資の資本コスト(金利rのこと)は同一になる。
だから、それ以上の収益が見込める投資のみが実行に移されるからである。
最後に投資家がもし投資先の企業の予想収益やその期待値を掴み得るモノと仮定すると、たった一種類の組み合わせだけが収益を最大化しうるという「ワン・ファンド・ポートフォリオの定理」が成り立つ。
そしてそれをもとに各株式の価値を決定すると、ある株式の実勢価格が高いか安いか判断できる。
だから、投資家はそれを元に確実で実りの多い投資を行うことができる。
だがしかしそういう目安が仮にうまく計算できたとしても、それが実際の利益になるかと言えば、そうではない。
証券市場はあらゆる情報を元に瞬時に価格が調整される市場である。
だから、そのような計算が成り立つならば儲けも瞬時に0になってしまうからである。