昇進トーナメントは、有効な業績評価

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 業績の良い者を昇進させ、高い賃金の仕事に就けるという形態のインセンティブは、「比較業績評価法」の特殊な形である。

 

 この場合、このシステムは「トーナメント」となり、少ない昇進のイスを巡って勝者と敗者が別れるという形になる。

 

 だから同等の成績を上げた者が二人以上いても、昇進のイスが一つしかなければ僅差で待遇は天と地くらい分かれることになる。

 

 そしてイスが空けば、大してよい業績を上げていない者が昇進してしまうという場合もある。

 

 だがしかし、業績に応じた報酬を与えるというシステムにおいても「トーナメントは唯一の効果的なインセンティブを与える」のである。

 

 たとえば難しい仕事を任せられている社員Aと、比較的容易な仕事を割り当てられているBという二人の社員がいるような場合、業績で判断すればBが高給をもらうことになる。

 

 だがしかしそうなるとAに対しては何のインセンティブも与えられないことになろう。

 

 こう言う場合に「昇進トーナメント」は、Aに対してもインセンティブを与えることができる。

 

 というのも昇進に関しては、業績評価は「量ではなく質によって判断される」からである。
つ。

 

 企業の経営者は、自企業の業績が判断しにくいような場合に業績に応じた給料やボーナスを支払うのをためらうことが多い。

 

 そう言う場合は業績がどうであったのかは第三者にはわからないが、昇進ならそれがハッキリする。

 

 すなわち業績を上げたものを昇進させないと有能な社員が流出する恐れがでてくる。

 

 さらに、そう言うことがハッキリすると、従業員を積極的に仕事に向かわせる動機付けができないからである。

 

 だから、業績給をケチる経営者であっても昇進システムは避けて通れない。

 


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昇進トーナメントの問題点

 もちろん昇進トーナメントにも問題点はある。

 

 それはトーナメントが「順位」に依存してしまうことだ。

 

 すなわち必ずしも「高業績」によって決められるモノではないので、従業員みんなが手を抜いて働いても褒賞にありつけてしまうという問題である。

 

「お役所仕事」なんていう言葉もあるが、仕事を適当に手を抜いて行っても順番によって昇進が可能なら、従業員はさほど働かない。

 

 そしてまた順位で昇進が決まるのなら、まじめに働いて高い業績を上げるよりも、ライバルを妨害して蹴落とす方が楽な場合も生じてくる。

 

 日本の公務員が腐敗や汚職に走るのは、評価が「事なかれ主義」で、何かをして失敗すると減点される「減点方式」だからだという指摘もある。

 

 しかしこれは、順位で順送りに昇進が決まるせいであり、こういうシステムだと、どうしてもこういうことが起こってしまう。

 

 そういうわけでトーナメントは効果的なインセンティブを与えることは確かであるが、その賞金を上手く設定しないと手抜きや非効率を促すことになってしまうのである。

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