垂直統合
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一つの財を生産し販売するには何段階もの工程がある。
それを簡単に書くと、
<上流>{原材料}
↓{部品}
↓{システム部品}
↓{最終組立}
↓{流通}
↓{販売}
<下流>となる。
これらの工程の殆ど全ての工程を、一つの企業でやってしまおうというのが「垂直的統合」というやり方である。
鉱山から鉄鉱石と石炭を掘りだして鉄を作り、それを元にシャフトや鋼板にする。
またガラスやその他の原材料を山から掘り出してフロントガラスをつくったりし、それらを組み合わせて車を作る。
作った車を宣伝して売り、そしてそれを客に売る。
保険もローンも様々な手続きも代行し、車の下取りやスクラップも引き受ける。
極端な垂直統合の場合は、まさに原材料から販売・廃棄まで、その財に関することは全て取り扱うことになる。
このような極端な垂直統合を行うと、企業は全ての段階での利益を独り占めすることが可能になるだろう。
だがしかしこの試みは、第二次世界大戦前にフォード社などが試みたが、結局うまくいかなかった。
現代ではこのような極端な垂直統合は行われない。
それは一体なぜであろうか
ここでは「市場調達」と「垂直統合」のそれぞれの長所と短所について考えてみる。
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市場調達の長所
市場調達の長所(1)「規模の経済性」
ボールペン・メーカーでもなければ、自社で使うためにボールペンを自社製にして作ろうという企業はない。
それは電話であれ、ファックスであれ、ノートやコピー用紙であれそうである。
これらは標準化された財で市場を通して安く手にはいるし、自社内で使うために大量生産しても消費しきれずに余ってしまうから、自製するよりも外部から購入した方がはるかに安くすむ。
こういった小物だけでなく、企業が使うビルや家具や空調設備なども大抵は外注である。
従業員の移動のために滑走路を敷き、飛行機を購入して利用するということも、もちろんない。
ある企業が自社で使うために何かを自製する場合はまず「規模の経済性」を達成できるだけの使用量が見込まれなければならない。
「こんなに使うんだったら、自分のところで作った方が安く付く」という場合にのみ、企業はその財を自社内で生産する方が効率的となる。
市場調達の長所(2)「範囲の経済性」
そしてまた販売に関しては、複合的な販売が多い。
すなわちガソリン・スタンドは、ガソリンを売る商売ではあるが、経営上、様々なサービスを提供している。
ガソリンを売る他に洗車や整備、車用品の販売、オイル交換、最近ではコンビニや食堂を併設する場合も増えた。
これらはつまりガソリンスタンドという店舗を使って「範囲の経済性」を捻出しようとしている行動である。
だがガソリン会社の直営スタンドでは、このような追加的なサービスがなかなか提供されない。
直営のスタンドで働いているのはガソリン会社の専属社員であり、ガソリンを売ることを第一の使命としている。
だから、その他のサービスについては努力するインセンティブを持たない。
一方ガソリン会社と契約を結んでいるだけのスタンドでは、「経営が成り立つためにはどのようなサービスでも導入する」。
なぜならその経営努力は自らの利益になるので、そのようなスキルを学んだり、そのための人材を雇うインセンティブが存在するからである。
販売に関してメーカーが直販店を大規模に経営しない場合が多いのは、小売店にはそういう「範囲の経済性」が求められるからである。