債務不履行と破産のコスト

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 企業がもし負債に対して予定通りに返済ができないようになった場合、貸し手は借り手に返済猶予期間を与えるか、それとも破産に持ち込んで取り立てられるだけをとるかを選択しなければならない。

 

 企業破産に持ち込めば回収できる資産は中古不動産や中古資本財のみに過ぎない。

 

 だが一方営業を続ければ、企業にはそれ以上のものが残る。

 

 たとえば知識豊富な経営者と従業員のチーム、商標とブランド名、事業運営システム、確立された供給者(サプライヤー)と顧客の関係。

 

 また企業の破産にはコストがかかる。

 

 例えば処理に当たる弁護士の費用。

 

企業の資源に対する請求者、つまり株主、銀行、債権者、労働者(組合)、等々の調整にもコストがかかる。

 

 たとえ破産になる以前においても、破産しそうだということがわかるとそれによって準レントが失われる恐れから、投資が過小になる可能性が生じる。

 

 信用の減少はリスクプレミアムを増すことになる。

 

 だから、資金を調達するにもサプライヤーからの掛け売りにも、以前よりコストがかかるようになった。

 

 エクイティに対する負債の比率増を大きくなればなるほど、企業が債務を履行しない可能性は高まり破産に伴うコストの期待値も大きくなる。

 


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第11条破産/会社更生法

 アメリカで破産法第11条が適用されると、企業は債権者から保護される。

 

 すなわち債権者は資産の差し押さえや、未払い分の生産を即時に強制することはできなくなる。

 

 第11条を宣言後に生じた負債には優先権が与えられ、企業は収益性の回復を図ることができる。

 

 つまりこの規定は、負債さえなければ通常に営業できる企業の持つ中古不動産などの固定資産以外の価値を保全する目的があり、効率性を保つために存在する。

 

 言ってみればこれは、前述した「債務超過による過少投資の問題」の解決策と同じ考え方である。

 

だがこの第11条破産も、強制破産に比べればコストは小さいが、しかし膨大なコストがかかる。

 

 企業の再編成費用、破産弁護士の費用などなど、、、 破産処理が長引けば長引くほど、弁護士以外の誰も利益を得られなくなっていく。

 

 だからそういう場合は第11条が存在することを前提として、債権者達は非公式の「債務変更」を交渉し、より多くの金を取り返そうとすることになる。

 

 すなわち「強制破産」による債権の法的な優先順位は 優先社債(負債) > 破産弁護士の費用 > 税金> 労働者への賃金支払い > 劣後債権 > 優先株 > 普通株であるが、実は一番下位の普通株所有者に「強制破産」を申請できる権利がある。

 

 だから企業が倒産した場合、株主の手元には何も残らないはずであるが、倒産手前の企業が債務超過の場合、株主が「破産させるぞ」と脅しをかければ、一番上の債権を持つ者は債権が全てパアになる可能性が高くなる。

 

「それなら債権をいくらか放棄しよう」ということになり、なんと劣後債(つまり利率は高いが、返済が優先社債より後回しになる社債)の保有者や一般株主まで何割かの資金を回収できてしまうようなことがよく起こる。

 

 企業が倒産した場合、普通株の保有者には法的な請求権がないのに分け前をうけとることができるのは、結局「第11条破産」を宣言できるという権利によるものである。

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