純・現在価値
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ある店舗のオーナーが、近郊で支店の開店を考えているとする。
オーナーはテナントビルを借り、スタッフを雇い、商品を仕入れ、地元の消費者に向かって開店を知らせる広告を打つ。
これらの投資によって期待する収益は、今後10年間に渡る売り上げから得られる利潤からもたらされるモノとする。
一年目の利潤をP1、二年目の利潤をP2、N年目の利潤をPnとする。
オーナーがこれらの投資を自己資金で賄わなければならないとき、その投資決定はオーナーの選好(プレファレンス)やタイミング(お金がある時しか投資できない)によって左右される。
すなわち自己資金を家を改築したりヨットを買ったりする「消費」に回すか、支店を出す「投資」に回すかという二者択一である。
だがしかしオーナーが借入金で投資ができる場合はそういう制限はない。
金を借り入れて投資してそれで儲かりそうなら投資が行われ、逆に儲かりそうにないなら投資は行われない。
単に収支予想による判断となる。
借入金利と貸出金利が同一水準にある「完全資本市場」が成り立っている場合においては、自己資金を自己投資した場合に失う機会費用(要するに他人に貸して得られる利息分の金)と、自分が他人から借金をしてしはらう利息(資金コスト)が同一になるため、理論上この投資決定は、オーナーの選好やタイミングと分離して考える事が可能になる。
これを「フィッシャーの分離定理」と言う。
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ローンの返済計画
今、借入金の金利が年率10%であるとする。
すると一年後の返済金額は最初の1.1倍となる。
返済をしなければ二年後には1.1の1.1倍すなわち1.21倍となる。
同様にt年後には(1.1)^t倍になり、これを「累積係数」と呼ぶ。
(利率rの場合は(1+r)^t) ある年のキャッシュ・フロー(ローン返済以外の諸経費を差し引いた利益)からローン返済できる金額を、そのキャッシュ・フローの「現在価値(プレゼント・ヴァリュー)」と呼ぶ。
一年後のキャッシュフローが99万円であったとすると、現在価値は90万円になる。
つまり今90万円だけ借金をしても、それは一年後には返せるという事になる。
二年後にキャッシュフローが121万円であると予想すれば、今100万円の借金をしても返せるだろう。
一般に借入金L万円が年利rで累積すると、t年後には借入残高はL(1+r)^tとなる。
だから、キャッシュフローでそれが完済されるとするとCt=L(1+r)^t、すなわち 借り入れできる金額L=Ct/(1+r)^tとなる。
これはつまりt年後のキャッシュフロー(利益)が、今現在の価値にしてどのくらいの額になるかという事である。
だから、これらを足していくと今いくら借り入れれば採算が合うかという計算ができる。
上記の表の場合、右端の現在価値を足すと264.13万円になる。
だから、この投資は264万円借り入れてもOKなプロジェクトだと言うことになる。
この時もし最初に必要な初期投資額が220万円だったとすれば、差し引き45万円の利益(ローンを完済した後の利益)が見込めることになる。
複数のプロジェクトがあり、たとえば人材不足などの要因からそのうちのいくつかしか実行できないような場合、この差し引き見込み利益の大小が判断の基準となろう。