負債とエクイティの構成比率
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古典的な市場の捉え方では、企業のファイナンス政策(負債とエクイティの構成比率)はそれ自体企業価値に影響を及ぼすことはない。
すなわち企業は銀行からいくらでも借り入れられ、ジャンク・ボンドでもサムライ・ボンドでもカミカゼ・ボンドでも、なんでも発行して資金を集めることができるという条件の元では、当然そうなる。
けれど実際には様々な理由から資金調達には困難がつきまとう。
企業政策が何らかのシグナルとなって投資家に影響を及ぼすのも確かなことである。
たとえばアメリカでは税制上、貸し手に対する企業の利払いは、法人所得の控除対象となるが、その一方で株主への配当は控除の対象とはならない。
これはつまり負債の方が有利な資金調達方法になるということだから、このような方法で資金調達した場合業績が上昇し株価が上がるという期待感を投資家は持つかもしれない。
もちろん利払いも配当払いも同等に扱っている国も多いから、そういう国ではこのような期待感は惹起しない。
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古典的モデルでの配当政策
モジリアーニ=ミラー(MM)の分析で用いたアイディアは、負債かエクイティかという選択以外のファイナンス決定にも応用できる。
オプション・ワラント・コール債・転換社債など、様々な複雑な金融商品全てに応用できる。
すなわち企業は様々な方法で資金を調達しようとするが、投資家もそれらを少しずつ購入して危険分散を図ることが可能である。
要するに投資家は企業に投資を行うと同時に(あるいは株式の配当で)社債を購入し、投資の失敗を社債によって相殺しようとすることが可能になる。
もちろんこれは個人投資家が企業や機関投資家と同様に株式や社債を自由に購入できるという条件(この条件があって初めて資本市場の均衡が成り立つ)の下においてであるが、すなわちそこでモジリアーニ=ミラーの第二の定理が成立する。
第2モジリアーニ=ミラーの定理 企業を通じて分配される総収益Xが、ファイナンスに関する決定には影響を受けず、かつ、投資家は企業と同じ条件で証券の売買ができるものと仮定した場合、企業の配当政策は企業価値に影響を及ぼさない。
MM定理(←注:ボクが略したわけではない)は、ファイナンスや配当政策を考える上での貴重な出発点となる。
MM定理の要点は、収益の分配法(すなわち負債とエクイティの比率)を変更しても、基本的には企業価値を変えないということである。