均等報酬原理
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企業に勤める従業員は、職務として通常複数の任務をこなさねばならない。
営業活動をしたり販売したり、顧客からの苦情に対応したり、代理店やアライアンス(協業社)と会議をしたり、商品のプレゼン(提案)用の資料を作ったり、人事評価を行ったり。
そういった様々な作業をせねばならない。
忘年会の企画を立てたり、店内や社内の掃除をしたりといった作業だって、仕事のうちである。
これらの仕事はもちろんそれぞれに意味ある作業なのであるが、「その作業は売り上げに結びつくか」「その仕事は利益を生むか」という観点から見ると、売り上げを生む度合いや確率、投資対効果、利益として結実するまでの時間にはかなりの幅がある。
つまり営業や販売活動というフロント・ラインに近い仕事は、売り上げ成績として結果がハッキリするから売り上げに直結する確率は高くなるし、投資対効果や利益として結実するまでの時間は短くなる。
一方広報活動や社内情報発信、社内システムの整備や社内厚生の充実等の間接的な仕事は、どこまで売り上げに貢献しているのか、どこまで利益を生んでいるのか分からない。
投資対効果もハッキリしないし、利益として結実するまでの時間もかなり長い。
だからもし雇用主が従業員と「売り上げのみを指標としたインセンティブ契約」を結ぶとしたら、従業員は売り上げに直結する任務にばかり時間を裂き、その他の任務はおろそかにすることになるだろう。
自分が職務に就いている間だけ業績を上げればよく、同僚の業績や自分が辞めた後の事などまるで考えないかもしれない。
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企業やお店の評判をどう維持するか
だが企業がそういう形のインセンティブ報酬ばかりを強調し、社内がそういう行動をとる社員ばかりになってしまうと、もはや組織として成り立たなくなる。
というのもそれでは歩合契約でセールスマンをたくさん雇えば良いだけで、組織として存在する必要がないからである。
そしてそれでは組織の「組織イメージ」による利益を生み出すことができなくなり、付加価値や余剰価値を失うからである。
たとえばファースト・フード店の一つの店で、従業員が押し売りまがいのやり方で業績を伸ばしたとしたら、どうであろう。
店舗内の掃除をおろそかにしたり、顧客との応対で雑な行動をしたとすれば、どうであろう。
チェーン店のある店の店長が、自店の売り上げを伸ばすためだけに質の悪いモノをお客に売れば、チェーン店全体の評判を落とすことになり、組織全体の利益を失いかねない。
以前にも述べたが、消費者やユーザーは自分で商品やサービスの質を確かめるコストを、信頼できる企業の商品に上乗せして支払う。
「あのチェーン店に行けば、少なくとも期待したレベルの商品やサービスが手に入る」「あの会社に頼めば、最悪でも納期は半年以内だし、障害対応もすぐにしてくれる」 そういう評判や企業イメージが、そのチェーン店や企業に顧客の足を向かわせ、そこで財やサービスを購入させる第一の動機となる。
なのでインフォーマティブ原理に沿って、インセンティブ給を設定すると、起業や店のブランドイメージがドンドン下がりかねない。
ではどうすれば良いのか。