BIS規制と銀行
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80年代末のバブル時代の日本の銀行は言ってみれば「金を勝手に無尽蔵に作って貸し出していた」わけである。
そしてさらにその金を使って日本国内のみならず世界中で土地を買いまくっていたわけだから、国際社会に与える影響は大きかった。
とんでもない逆選択が生じていて銀行の経営が不安定化していっているというのに、日本の銀行は際限なく「金を作り」そして世界の土地価格をどんどん引き上げた。
しかしそんな勝手なことをされたら他の国はたまったもんじゃない。
仕方がないので国際銀行業界はBIS規定という規定を作り、貸し出せる金の上限を守らない銀行とは国際的に取り引きしないと言うことにした。
※因みに自己資本比率が低下すると、経営者は目先の利益ばかり追うようになる、という話は、テキストの後半以降に登場します。
それがつまり自己資本比率8%(国際基準、国内基準は4%)とかいう規定で、お陰でバブルが崩壊したあと何年も経ってから、銀行は軒並み自己資本不足に陥ってこれに引っかかるようになりだした。
自己資本比率8%を達成しなければ、国際的な金融取引を行う資格を失う。
貿易立国である日本でこの資格を失うと、銀行にとっては大打撃である。
だから銀行は回収できる資金は徹底的に回収し、新たな融資を行わないことにして自己資本比率を高めようとした。
すなわちこれが中小企業に対する「貸し渋り」問題の大規模な発生を引き起こし、優良な中小企業がたくさん倒産する羽目になった原因である。
仕方がないから政府は「公的資金」というやつを銀行に注入し、銀行の自己資本比率を高めることにした。
つまり自己資本比率8%(或いは4%)を達成する水準まで条件付きの銀行の株式(特殊な転換社債のようなモノらしい)を政府が何十兆円も買い「ゲタを履かせた」わけである。
政府はそうして各銀行の発行株式のかなりの部分を資本注入で押さえ、期限内にその金を返さねば経営者は全部クビ、、、ということにした。
※バブル崩壊直後でなく数年経ってから、、、というのは、自己資本として銀行の持ち株を計上していたからである。
というのも元々自己資本とは、株式発行などで集める資金のことであるのだ。
しかし、日本の銀行の場合それではとうてい8%の基準をクリアできないから、BIS規制を決めるときに自己資本として銀行の持っている株式を計上してもいいことにしてもらって何とか体裁を繕っていた。
しかし、その株の価値もバブル崩壊後にじわじわと下がって、結局「やっぱり8%は達成できません」ということになったのだ。
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「逆選択」vs「信用割り当て」
金融が引き締められると銀行は金利を引き上げるよりも、むしろ「貸付先の質を改善する方が、有利な場合が多い」。
つまり金融の引き締めに対して安易に金利を引き上げると、優良で健全な借り手が別の銀行にどんどん逃げていってしまうからである。
だから銀行はそういう場合優良な借り手を選別し、これに低金利で融資を行う。
これを「信用割り当て」という。
融資額を減らさない様に危険なBタイプの借り手にどんどん融資をすると、支払不能に陥りいずれ銀行が潰れることになる。
アメリカでは1980年代にそういうことが起こり、S&L(貯蓄貸し付け組合)に対して何億$もの税金を注入することとなった(→この話もモラル・ハザードのところで登場します)。
人件費が高くなったときに、経営者が賃金カットより解雇を選ぶ理由の説明にも、同種の説明ができる。
つまり有能な労働者は外部での雇用機会に恵まれているので、賃金カットを行うとそういう有能な労働者が他者に引き抜かれてしまう危険が増大するからである。