昇進システムとインセンティブ
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最初に挙げた内部労働市場が発生する場合の特徴を改めて確認しておく。
- 長期雇用・限られたエントリーポート(入職口)
- 内部昇進による空席の補充(トーナメント)
- 仕事に付与された給与(+わずかな業績給)
これらは互いに補完しあい、一貫した内部労働市場システムとして働いている。
ではこれらが企業の抱える問題の一体何を解決するのだろうか? それは
1)仕事の業績が上司(管理者)には観察しうるが、それを客観的 に第三者に示せないような状況に置いて、従業員に「動機付け」 を行うことができる。
2)難しい仕事をこなす仕事により有能な従業員を振り向けるとい うことが可能になるために、仕事の効率性が上がる。
という二点である。
新入社員には全て低いポジションで低責任の仕事から与え、それを期待通りにこなした者をそのまま継続して雇用し、それもこなせないモノはクビにする。
そして期待以上に能力を発揮した者は昇進させ、より高度なレベルで高責任の仕事と高い賃金を割り当てる。
こういう方法で仕事内容と賃金を引き合わせる。
長期雇用によって才能のある社員を様々な形で研修させ努力させることによって、企業特殊的な人的資本の養成も簡単になるし、その見返りも企業は手にすることができる。
業績給システムだけで報酬を支払うなら、よい業績を上げた時点でその対価を支払わねばならない。
が、仕事に給与が付与されているのでその対価を支払わずに昇進させることもできる。
こうしたシステムがあると従業員は、「自分の努力レベル」に見合った昇進水準を考慮して努力するだろう。
努力を重ねて昇進を目指す者は努力するし、努力するのは面倒くさいから昇進しなくても良いと考える者は、現状の仕事をこなすだけで終わりにする。
言ってみれば「釣りバカ日誌」のハマチャンみたいなもんで、最低限の仕事だけやって、あとは趣味に時間を割く。
休みはあくまでも休みで、仕事に関係することなどやらない。
従業員はそうして自らの行動を「均衡」させる。
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昇進システムの利点
昇進システムには、途中から高いポジションに就いてサボる従業員を排除できるという利点がある。
たとえば官僚の天下りなんてことがなく、従業員は一律に下位から仕事をスタートさせられて、基本的な就業状況を観察される。
だから、無能な社員を高給で迎えた挙げ句、仕事をサボったり高給をかすめ取られてしまうということがなくなる。
またこのシステムでは、昇進を諦めた社員からは企業はレントを受け取れないが、昇進しようと努力している社員からレントや準レントを受け取ることが可能になる。
つまり昇進しようと言う上昇志向の社員は現在より高い地位における能力を獲得しようとして努力し、現在の地位に対して期待される業績以上の働きを見せる可能性が大きいからである。
もちろん企業としてもそういう有能な社員を大事にし、期待される社員に対してはレントを支払う場合もある。
タダこのモデルではピラミッド型に地位や役職が配置されているように思いがちであるが、そうでない場合も多い。
たとえばスタンフォード大学でも、助教授より教授の方が多かったりする。