コーポレート・コントロールと買収
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金融証券は、企業の決定やコントロール権をもたらす。
たとえば・株主は経営者を監視し、経営者に動機付けを行い、組織に規律を与えて戦略を監督する取締役を選出したり更迭する権利を持つ。
企業の資産を大量に売却したり、吸収合併されるなどの決定は、株主の了解がなければ行えない。
債権者は、債務不履行に陥った企業の資産を売却させることができる。
債権者は債務者に対して契約に付帯する条件を履行させる権利を持ち、アメリカではさらに第11条破産に基づく再建案を承認したり拒否したりもできる。
証券や株式に関する権利は、業績の悪い企業の経営者や取締役のクビをすげ替えるコトができるので、法人支配を目的とした市場(マーケット・オブ・コーポレート・コントロール)を形成する基礎となっている。
合併、買収、テイクオーバー(乗っ取り)、LBO(レバレッジドバイアウト)、、、1980年代にアメリカに盛んになったこの市場は、現在やや沈静化しつつある。
だがしかしその時に編み出された様々な経営者の防衛手法は未だ強固に生き続けており、そのことが経営者への規律付けやインセンティブ付与を弱めている。
そういうわけだから、投資家や銀行などの債権者は自らの資産保全のために、企業の経営者を監視したり経営者にインセンティブを与える新たな方法を模索し始めた。
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コントロールの力学
業績の悪い企業の株主には、二つの選択肢しかない。
それはつまり「株式売却」と「効果のない意思表明(文句)」である。
だがしかし低迷企業の株式なんて、高くは売れない。
また持ち株比率が少なければ、発言もただの遠吠えになってしまいがちである。
だから力のない株主は、何とか力を持って発言しようとする。
その方法が「テンダー・オファー」と「委任状獲得」である。
「テンダー・オファー」 テンダー・オファーとは、その企業の株主に対して買い取り価格を提示し、それを買い取ることで企業のコントロール権を得ようという方法である。
たとえば「A社の株式を一株○○ドルで、資本比率40%まで買い取る」というオファーを株主に提示し、それを買い取る。
そうして無能な経営者や取締役を更迭し、新しい経営者と取締役をその企業に送り込むのである。
テンダーオファーは企業の外部の者による乗っ取りの一種である。
「委任状獲得」 株式会社は株主総会を開かねばならない。
だが広く薄く分散して株式が所有されているような大企業の場合、それに参加する株主は少数である。
だから総会を開く場合にはその通知と、株主としての投票権を誰にゆだねるかという「委任状」が株主に送られてくる。
総会に出席しない株主は自分の権利をその委任状によって誰かに託すことができるのだ。
この委任状は通常は現経営陣が大量に受け取ることとなる。
だがしかし業績が悪い場合、経営陣を刷新しようと言う勢力が委任状を獲得してコントロール権を得ようとする。
もちろん現経営陣も委任状を集めようとするわけだから、つまり「委任状獲得競争」によって企業のコントロール権が決まるわけである。
委任状獲得競争は膨大なコストがかかる場合が多いし、前にも述べた通りフリーライダー問題が起こる。
だから、競争を仕掛ける方が勝利するのは難しい。
だがしかし、それでも株式を買収するよりは費用が少なくて済むという利点もある。