日本企業の下請け企業に対するインセンティブ
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製品のコストを引き下げるために部品を安く調達するのは当然の努力としても、コストを引き下げればそれで企業はうまく利益を上げることができるのだろうか? という問題も生じる。
つまり生産部門は生産した商品の売れ行きに責任を持つべきか、それともコスト削減だけに責任を持つべきか、、ということである。
小さな企業だと生産部門も販売部門も同じ場所にあり、従業員も両部門の事情に明るくなる。
だから、互いに連携しあって運営される。
だが大きな企業となってくると、そうは行かない。
それぞれ専門のオフィスや工場を構え、専門のスキルを持った社員が働くことになる。
そうなると情報の共有が崩れる。
だから、販売部門には販売部門なりのインセンティブを与え、一方生産部門には生産部門なりのインセンティブを与える必要が出てくる。
そこである工場の管理職に、何らかのインセンティブを与えるような報酬契約を考えてみる。
このときもし工場の管理職と、製品の売り上げに連動しない形のインセンティブ契約を結んだとする。
つまり「製品の売り上げは気にしなくて良い。
品質とコストダウンだけを考えて作れ。
そうすればコストダウンした分に比例してボーナスを出す。
出世も昇給も思いのまま」という感じである。
そうするとこの工場は、品質を上げ、低コストでものを作ることに全ての努力が注がれ、「良いものは売れる!」主義で突っ走ることになる。
こういう工場を「コスト・センター」という。
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プロフィット・センター
「供給は需要を作り出す(作れば売れる)」というのはセーの法則だ。
しかし、そう言う感じでただ品質が良くて安いモノが大量生産され、市場にただ安いだけのありふれた商品が垂れ流される。
だが消費者はそんな「ありふれた商品」なんてそうそう買いはしない。
そしてもっと気の利いたモノがあれば、そちらに顔が向く。
だから消費が一巡する前にその商品は売れなくなり、営業所には予想しない在庫が山ほど積まれることになる。
だがしかしコストダウンにのみインセンティブを与えられた工場では、コスト・センターと化しているからそれがわからない。
「良くて安いモノは売れる」という信念でモノを作っている。
だから、「どうして売れないんだ?営業はサボっているのか?」と言うことになる。
だからもし企業が企業として利潤を追求するなら、生産部門にも売り上げに対する努力を求めなければならない。
「コストダウンに投入する努力にも、売り上げ拡大に投入する努力にも、同じ強さのインセンティブを与えなければならない」ということになる。
均等報酬原理を適用すると、e1が「コストダウンの努力水準」でe2が「売り上げ拡大の努力水準」ということになる。
このようなインセンティブを与えたとき初めて、工場は単なるモノを作るだけの「コストセンター」から、金銭的利益を作り出す「プロフィット・センター」となる。
もちろんそうなると販売部門に与えるインセンティブは、その分減ることになるのだ。