制度によって補強された評判

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評判システムか裁判か

 

-評判なしに法律制度を使って取引をうまく行おうという考えもあるかも知れない。

 

 だがしかしそれは面倒で時間もコストもかかるし、それだけの資源を裁判に振り向けても、判事や陪審員には何が問題になっているかすら理解されない場合も多く、不確実である。

 

 政治的配慮や収賄によって参考人がウソを言うやもしれず、殆どそれは役に立たない。

 

 だからこそ企業や組織はこれまで、・行動規範の設定・契約履行の遵守・係争処理などのために、法的制度よりむしろ私的な制度慣行を用いてきた。

 

 たとえば国民国家成立以前のヨーロッパにおいて、商人たちは「商人法」なる取り決めを作り、取引を行っていた。

 

 様々な異国の港を使って商品を取り引きするには、様々な国の商人と取引を行わなければならない。

 

 が、国毎に取り決めが違っていると何かと面倒である。

 

 すなわちイギリス商人の間では当たり前の商慣行だ。

 

 しかし、フランス商人の間では違法な商慣行というものがあれば、イギリス商人とフランス商人の間で取引を行うことが難しくなる。

 

 だから彼ら貿易商人たちは、どこの国であろうと交易に関してのみ通用する取り決めを作り、それに従って取引を行った。

 

 そして係争処理のために私設裁判官を雇用し、裁判の結果は直ちに商人間に公表された。

 

 誰が正しかったかを決め、それを他の商人に伝達するという困難な作業を、商人法によって容易に行えるようにした。

 

 このような情報が公表されることにより、メンバーに信頼を裏切らないような行動をとるインセンティブが強化される。

 

 つまりこのような制度は評判のシステムを補強する形で機能しているということになる。

 

 現代の「格付け機構」や「信用調査機構」は、その現代版であると考えられる。


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評判による制度

 

 だがしかし、問題がないこともない。

 

 このような評判による制度でメンバーに罰を与えるのは、裁判所や格付け機構ではなく、個々人や個々の組織である。

 

 だからもしその個々の主体が制裁を行おうとしても、それによって返って損害が出るなら制裁は行われない。

 

 ある場所で取引が行えなければ他に行けばよい、、、という状態では、厳しい規律を設けたらみんなその取り決めや協定から脱退し、残って協定を遵守している者が損をしてしまうという事態が生じてしまう(そういうことってよくありますね)。

 

 つまり影響力や自立力の大きな存在に対しては、そういう制裁はまるで実効が無い。

 

 少々評判を落とそうが、すでに大きな資産を持ち、たくさん子飼いの子分を抱えている大勢力者は、その巨大な実力によって評判の機能を覆してしまう。

 

 評判によって誠実な行動を期待するというシステムは、確かにそ .ういう限界を持っているのだ。

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