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日本企業の下請け企業に対するインセンティブ
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日本の大企業(自動車・電機メーカー)が下請け企業に支払う部品代金は、契約で取り決められた金額ではなく、供給企業の決算報告書に書かれた実際の費用による。
たとえばある部品一万個の目標価格x^億円、実際の生産費用をx億円とすると、部品の代金はp=x+β(x^-x) [億円]となるというのである(0<β<1)。
これはまず発注側企業と下請け企業とで目標部品価格を取り決めて、その目標価格と実際にかかった費用との差額を「双方で分配する」という契約である。
こういう契約を結ぶとどうなるかと言えば、
目標水準より部品製造コストが安く作れた場合(x^>x)
→下請け会社はかかった費用に加えてβ(x^-x)だけの利潤を得る。
残りは発注企業の利益となる。
目標水準より部品製造コストが高く付いてしまった場合
→下請け会社はかかった費用に加えてβ(x^-x)だけのペナルティを支払わねばならないが、しかしその一方で発注企業側も(1-β)(x^-x)分のコストを負担することになる。
つまりこれは「下請け企業のリスクの一部を発注企業が担う代わりに、下請け企業が契約を遵守した場合に本来受け取るはずの利潤をそれだけ分もらう」ということだ。
発注企業側は部品を安く供給してもらうためのインセンティブを下請け会社に与え、逆に下請け会社は部品開発や製造にかかる資金的リスクの一部を発注会社に負担してもらうということである。
下請け企業は「売れるかどうか定かでないのに開発したり製造したりしなければならないというリスク」に対し、リスクプレミアムをそれだけ支払っているということになる。
※これはもちろん90年代初めころまでの話だ。