協同組合の利点
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組織形態の一つとして協同組合と言うモノがある。
協同組合型組織は19世紀に現れたユートピア的共同体で、組合員を取引の対象とする組織であり、組合員による出資で成り立っている。
協同組合の活動方針は一般の企業のように出資額の多寡によって発言力が決まるわけではなく、たいていは組合員一人に一票の投票権が割り当てられる。
そうでない場合でも発言力は出資シェアには比例せず、取引高の多寡によって発言力が変わる方式を採用していることが多く、この点が株式会社とは異なる。
また組合員は組合組織によって加入・脱退が認められ、組合加入によって得られる利益や便益は組合によって提供されるサービス価格の割引くらいしかない。
加入時に支払った出資金は脱退時に返還される場合が多いが、返還されないこともある。
組織というのは実はこういう「組合型組織」と「社団型組織」の二つに大きく分類でき、組合型組織は・組合員になるには既存の組合員の了解が必要。
・組合を脱退するには他の組合員の了解が必要。
・新しく組合員が増えたり減ったりすると、組合活動の方向性も組合員総会などで再検討される。
という特徴を持つ。
一方の社団型組織の場合は、普通の企業や官公庁のような組織で、・新しい組織員の加入/脱退は経営者や責任者など一部の者が了解。
・新しく組織員が増えたり減ったりしても、組織活動の方向性はそれによって変更されはしない。
という特徴を持つ。
協同組合組織は現代の経済活動において、一定の地位を占めている。
たとえばアメリカの大学生協は、全アメリカの書籍市場のおよそ10%のシェアを誇っている。
家庭用の金物市場の半分は、小売業者による協同組合組織によって供給されている。
多数の新聞社が所有する「AP通信」は、アメリカの二大国際通信社の一つであるし、農業に関しても農業用品協同組合が25%以上のシェアを占めている(飼料・肥料・農薬の製造販売などではさらに高いシェアを占めている)。
協同組合組織に対しては、活動の制限を条件に様々な法的優遇・支援制度が認められているが、協同組合組織が成功しているのは主に、独占力を持つ財やサービスの場合である。
たとえば大学生協が成功しているのは、大学の近くの書店で大学生相手に専門書をマークアップ原理による高い価格で売りつける余地が生じているからであると考えられる。
学生は教科書が少々高くても、それを買わざるを得ない。
だからそのような場合に非効率だが営利事業でない協同組合の存在が、本屋の独占的価格を引き下げ、小売価格の上限を決める基準となる。
また食品雑貨や家庭用金物の小企業による供給組合と、垂直統合的大企業は共存しているし、営利企業であるスーパーマーケットと生活協同組合も共存しているが、これもの独占的供給の問題を解決する一つの機能である。
もちろん生産者による供給組合が、市場支配力を形成するために結成される場合もある。
たとえばカリフォルニアの農産物出荷組合は組合員に出荷量割り当てをすることによって、取り扱い産物の価格が暴落しないようにしている。
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協同組合の問題点
協同組合組織は、加入資格や活動に法的な制限を加えられている事が多い。
たとえば農業協同組合に加入するには投票権を持つ組合員の過半数が農業生産に携わっていなければならない(フランスなど)とか、生活協同組合の活動は都道府県の県境を越えてはならない(日本など)とか。
そういった様々な規制と引き替えに税負担の免除などの便益が与えられている。
このような制限はたいてい組合員の職業や生活様式を均一にし、組合の活動をそれらの均質化した組合員に対するサービスに限定するために役立つ。
つまり農協は農業生産に関わる組合員によって構成され、そのためのサービスが用意されるし、大学生協は大学生や大学の教官・研究者に対し大学生活に関わる様々なサービスを提供する、と言う具合である。
だがしかし消費者組合や電力供給組合のように、組合員の階層や身分・職業が幅広くなる場合もある。
このような場合は組合活動の方向性が決まらなくなったりすることが起こりやすい。
たとえばカリフォルニア・バークレーの生活協同組合は1980年代、組合員が富裕層から大学生・貧困層までの広い階層に広がったために、方向性が決まらないと言う事態に陥った。
低所得者層を代表する組合員は、赤字経営であっても組合で扱う食料品の価格を低く抑え、貧困層の多い地域への赤字覚悟の出店をするように求めた。
そして一方富裕層を代表する組合員は、経営の健全化と高級品の取り扱いを求め、貧困層の救済に組合が深くクビを突っ込みすぎないようにと釘を刺した。
電力供給組合の場合も使用量に対して利用料金を均一に比例させるか、それとも電力供給のピーク時に電力を使用する者に割り増し料金を設定するか、争いになった。
これらの問題は、協同組合の組織が大きくなり組合員の構成が広範に渡ってしまったことから発生している。
つまり協同組合という組織は組合員の厚生を図る組織である。
だから、組合員が少なく同業・同種の者によって構成されている場合には活動方針が明らかに定まってくるが、組合員が増え、組合員の職業や階層が多岐に渡るととたんに活動方針があやふやになるのである。
協同組合組織が市場で一定のシェアを持ちながらも、決して主流になれない理由の一つがここにある。