年功賃金制の終焉
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かつては年功によって割り増すという形で報酬を支払う制度が、企業の暗黙の契約であった。
ちゃんと働くかどうか分からない勤続年数の浅い者には限界生産力に見合うよりもやや低い報酬を支払い、そして長年働いた者にはやや高い報酬を支払う。
これは一種のスクリーニングのためであり、ベテランの転職機会費用を勘案したものであり、また効率性賃金の一種であり、先入者利益の一種である。
比較的単純にモノを作ると言うだけの労働に対しては、作った分だけの歩合を即座に支払うということが可能であり、業績給を支払うのも簡単である。
だが業績評価が何ヶ月後、あるいは何年後にならないと分からない(測定できない)ような場合には、そういうことはできない。
あえてそれをやれば「目先の指標を引き上げるだけの工作」によって、長期的利益が損なわれる危険性がある。
だから「後払い報酬制度」というものが採用されるワケである。
適切な後払い報酬制度が確立できれば、企業や組織は従業員や管理者の努力に対して適切な報酬を与えることが可能である。
そしてそれが達成されれば、企業や組織は従業員や管理者にまっとうな業績インセンティブを与えることができる(インフォーマティブ原理)。
だが実際にはその結果がでる前に担当する場所が変わったり、或いは転職して「組織(工場)」を離れるということがよく起こる。
また企業や組織が様々な事情により後払い報酬契約を反故にしたり大幅な減額にしたりすると、後払い報酬方式によるインセンティブは失われる(不完全なコミットメント問題)。
たとえば「若年者を安月給でこき使う」ということが可能なのは、「長年勤めあげたら給料が上がる、退職金もたくさんもらえる」という「暗黙の契約」があってこその話であり、現代日本のように年輩者がどんどんリストラされて退社していくような状況では、まるで効果がない。
だから企業が後払い制度を採用したり利用したりしようとするならば、その制度を最期の最期まで堅持しなければならないのだ。
しかし、もはやそう言うことは不可能になった。
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CEOの業績給
CEOの報酬が、その組織で働く労働者や従業員の給与と比べてべらぼうに高い場合に志気が落ちるということはよく起こる。
特に業績不振の企業のCEOが高額報酬を受け取っていることが従業員や周辺に知れると、組織全体の志気は一気に下がってしまう。
だがCEOの給与と資産が会社の業績を反映しているという証拠は極めて多く、問題はそれが適切な程度であるかどうかである。
CEOや管理職(特に上級管理職)の給与は、何だかんだ言っても、彼ら自身が決めるのである。
株主や社外重役も影響力がないわけではないが、やっぱりそれは彼ら自身で決定される。
株主はCEOの任免権を持つだけに過ぎず、CEOは「お手盛り・フリーハンド」で自分たちの給与を決めることができる。
だがある経済誌の調査によると、とんでもない高額の報酬を得た上位25人のCEOたちの平均でさえも、会社の収入1,000ドルあたり2.26ドルだった。
利益1,000ドルあたり30ドル(つまり全利益の3%)にしか過ぎないのだという。
これは中小企業のオーナーの取り分と比べれば、かなり小さいパーセンテージである。
もちろん絶対値としては大会社のCEOの方が大きいわけだ。
しかし、しかし巨大な組織を動かして利益を上げ続けるというのは至難の業である。