組合活動と準レント
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組織内でインフルエンス活動、つまり自分や自分たちに有利な資源配分をさせるように権限者に働きかけるような活動を行い、それに成功すると、活動を行った者は需要供給バランスによる均衡配分より余分に多くの配分を得ることができる。
たとえば一時期の地方公務員の給与は毎年上がり、いつの間にか国家公務員より何割も収入が上になるようなことになった。
それは毎年のように税収が伸び分配する原資があったために、労働市場での均衡賃金より遙かに高い賃金を(諸手当の形で)分配することが可能であったからであるが、しかし何故そのような分配が行われたかと言えば公務員組織内での組合活動が活発で圧力団体として機能していたからである。
組合活動によって賃金の均衡水準より高い賃金が支払われるならば、そこに「インフルエンス活動によってレント(準レント)」が生じたということになるが、これまでの研究者は企業や労働組合・業界団体その他の民間組織内部で発生するインフルエンス・コストにあまり注意を払って来なかった。
つまり古典的経済理論の範疇では、「労働者の賃金は同一職種・同一労働量なら同賃金である」とされ、危険な仕事は安全な仕事より高賃金で、皆が嫌がるような仕事に対してはプレミアム込みの高い報酬を与えられる、、ということになっていたからである。
だがしかし現実の組織では、前述した「効率性賃金理論」のような賃金の支払いが行われ、組織内にレントが発生している。
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効率性賃金理論(復習)
適当に労働者を雇って単純作業をさせるような場合は、特に高い賃金を支払わなくても良い。
市井の労働賃金水準通りの賃金で労働者を雇い、仕事をさせればよい。
だがしかし運送会社のトラックドライバーを雇う場合は、注意が必要だ。
勤務状況の監視が難しく、ドライバーの仕事ぶりが直接会社の業績に影響するような職種の従業員に対しては、適切なインセンティブを与えないと会社の利潤に大きく響く。
このとき会社がトラックをドライバーに貸し、売り上げ(運送)に対してのみインセンティブ報酬を支払うとすると、ドライバーはトラックのメンテナンスをおろそかにし、トラックなどの資源を食いつぶしたりする。
すなわちトラックを限界まで酷使し、トラックをドンドン潰しながら自らの業績を上げる。
その結果、かえってコストがかかり、企業自体の利益はまるで上がらないなんてことが起こりかねない。
このトラックがドライバーの所有であれば、ドライバーはトラックを大事に使い、資源は効率的に配分されることになるわけだ。
しかし、しかし労働者は通常、そんな大金を持ってない。
では企業はドライバーにトラックを買えるだけの報酬を与え、ドライバーにトラックを買わせれば良いんじゃないかということになる。
ところがそうすると今度はドライバーは独立してしまう可能性が大きくなり、会社は高い報酬を払ってドライバーにトラックを与え、逃げられて丸損することになりかねない。
そういうわけで企業はドライバーに対し、インセンティブ契約を結ぶより「同業種の他の企業より高い賃金」を支払い、ドライバーを雇うという方法を採用することになる。
つまり退出を防ぐだけの報酬の上乗せをするのだ(→準レント)。
そうすれば確かに有能なドライバーを集めることができるし、そういう優秀なドライバーを他社に引き抜かれる恐れも減る。
そしてさらにドライバーに対しては、評価が落ちて高収入をフイにしないような「誠実にふるまうインセンティブ」を与えることが可能になる。
今週の・・・
組織には必ず利益を生む部門(直接部門)と利益を生まない部門(公的・間接部門)がある。
営業部門や製造部門のように、活動の結果が売り上げに反映されるような部門が直接部門。
アフターサービスや経理・事務・渉外などといった、活動の結果が売り上げに直接反映されないような部門が間接部門。
古典的経済学が成立した時代は、どちらかというと直接部門的な経済活動の比率が間接部門的な経済活動の比率よりはるかに高かったので、インフルエンス活動などの影響は現代より小さかった。