独占による歪みの回避
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商品やサービスを生産する場合に、その材料となる財やサービスの市場(インプット市場)が非競争的な市場であることがある。
こういった場合も垂直統合が意味を持つ。
部品の供給企業が複占・寡占などの状態にあって、しかも複占・寡占企業がお互いに競争していない場合、その部品の値段は限界費用よりはるかに高い複占・寡占価格で買わねばならなくなる。
高い値段で作った商品は当然高くなる。
しかもこの企業が10%のマージンをとって商品価格を決めるとすれば、上流企業が独占的価格で上乗せしたマージンに対しても10%のマージンを乗せることとなる。
だから、できあがった商品にはなんと二重にマージンが乗ることとなってさらに高くなってしまう。
このような場合、企業は上流部品企業を傘下に持つことによって自らの利潤を損なわずに他の企業より安く財を供給できるようになる。
もちろん川上の企業が川下の企業を統合するという方法もあるが、こうすると消費者の満足と企業の利潤の両方が満たされることになる。
これは見方によれば「サプライヤーが得ているレントを、川下の企業が垂直統合によって自社に奪い取っている」と言う風にも見える。
だから、そう考えた場合はには統合する部品供給企業が市場独占力を持った企業でなくても良い。
というのも上流企業が何らかの形でレントを受け取っていれば、それを垂直統合によって奪い取ること自体に意味があることとなるからである。
たとえばある部品を上流企業に確実に納入させるために、何らかのインセンティブ契約を設けていれば、それは実は上流企業にレントを与えていると言うことである。
企業統合をすれば、部品の確実な納入はその部門の責任者を監視するだけの費用(モニタリング・コスト)だけで済む。
企業と企業の関係はあくまでも対等であるが、雇用主と部下の関係は対等な関係でないから、そういう節約が可能になるのだ。
「他人に支払うレントは最小に。
他人からもらうレントは最大に」というのが企業の本音であり、それが達成できる場合には上流企業が市場独占力を持っていなくとも垂直統合が意味を持つのである。
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参入障壁を高くする
そしてまたレントが生じると言うことは、そこに「参入障壁」があるということである。
すなわち何らかの参入障壁があるからこそ、人や企業はその上流企業の商品に対して余分に高い金(レント、プレミアム)を払うのである。
誰でも簡単に作れるモノなら、誰もわざわざ他人から買わない。
誰にでも少し努力すれば手に入るモノなら、誰も他人からそれを手に入れようとは思わない。
ということは逆に、そういう上流企業を統合することができれば同業他社より有利にビジネスができることとなる。
価格支配力を持つ上流企業を統合することができれば、自社用には限界費用ギリギリで商品を調達できるし、他社用には少し高い目の価格で部品を売ることが可能になる。
もちろん他社に自製するインセンティブを持たせるほど高くない価格を設定する。
そうすれば競合他社は以前より安く部品を仕入れることができるようになる。
だから、その企業は自社内でその部品を自製するためのインセンティブを失うこととなる。
つまり独占的企業が目一杯独占的利潤を追求する場合には、その企業の供給する部品を川下企業が自社内で自製しようと言う強いインセンティブを持つが、それほど高くない場合には外部調達した方が得になるから自製インセンティブは弱まる。
そうなると企業は適当に儲けながら、同時に他企業の参入を牽制したり防ぐことができる。
だから、このような場合にも垂直統合は意味を持つわけである。