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日本の自動車産業は、下請け会社を組織化し、系列化によって垂直統合を行ってきた。
この方法では、 垂直統合の一つの問題点であるホールド・アップ問題の発生も、押さえることができた。
部品の発注は大きな問題などが無い限り次のモデル・チェンジまで継続するために、特殊的な資産に対する投資の回収もたいていは可能になる。
要するに、あらかじめ生産量の総量が分かっているため、それ以上の過剰投資が抑えられると言うことだ。
また下請け企業は、頑張れば発注増が見込め、失敗すれば修理コストを担った。
これは市場インセンティブに類似した方法で、継続的な期間に渡る供給契約はイノベーションに付いていくための継続的な新規投資をも可能にする。
もちろんこれらはコア企業(トヨタなど)とサプライヤー(部品生産企業)との間に継続的な信頼関係が構築され、コア企業がそういう方式を将来に渡って継続するという約束が守られるという条件によって支えられているのだが。
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経済性を無視しているのに、なぜ儲かる?
しかしここで一つ疑問が生じる。
これらの方式は確かにサプライヤーに特殊的な資産への投資を促すモノではあるが、見方を変えれば「規模の経済性」や「範囲の経済性」を犠牲にしたやり方である。
全ての車種に同じサプライヤーのヘッドランプを付ければ、大量生産による規模の経済性と範囲の経済性を獲得できるわけだから、たいていもっと安く付くはずである。
だがトヨタなどの日本企業は、部品メーカーの製造技術の向上や生産性の向上がなければ自社の製品の向上もないと考えているようである。
そのためにサプライヤーの特殊的資産への投資を促せるこのような方式で発注をし、上記のような規模の経済性や範囲の経済性を幾分犠牲にしても、割に合うと考えているらしい。
もちろんサプライヤー側も、フランチャイズ店のオーナー達と同様に「連合会」を結成し、コア企業と条件や発注振り分け基準の明確化を交渉する余地を与えられている。
コア企業がトヨタであっても、日産にもマツダにも部品を供給できるようになっているので、サプライヤーにも一定の規模の経済性は達成できる。
このような方式は、社内に部品製造部門を抱えている場合のインフルエンス・コストも節約できるし、垂直統合型であっても市場インセンティブを利用できるという意味で、画期的である。