従業員の確実同値額
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収入が歩合や会社の業績によって上がり下がりするより、 「給料が安くても、確実に一定額以上の給料を毎月もらいたい」という従業員は多い。
このとき従業員に支払われる給料額は、変動リスクを全て受け入れた場合の収入Iの平均(あるいは期待値)をI^とし、リスク回避係数をr(I^)、そして報酬の分散値(ばらつき)を Var(I)とすると、インセンティブ契約(つまり業績に応じて報酬が上がったり下がったりするような報酬契約)でない完全な固定給の場合は、 I^ - (1/2)* r(I^) * Var(I)となる。
rの値は、リスクが嫌いな堅実あるいは贅沢(?)な人の場合は大きくなり、逆にギャンブル好きな人間の場合はr≒0となる。
一般に堅実な人は(或いはお金持ちであまり金にガツガツしないようなタイプの人は)、お金を払ってでも確実な収入を欲しがる。
逆に勝負好きな人間や、一発当てて大儲けしなければならない人は、成績がよければさっさと儲け(ボーナス・歩合)をもらって遊びに行きたがる。
この「お金を払ってでも」というその金額を、特に「リスク・プレミアム」と言い、(1/2)* r(I^) * Var(I)がそれに当たる。
リスクを避けたい人はリスクプレミアム分給料が安くても働く、、というモデルであり、だから給料のばらつきが大きければ大きいほどリスク・プレミアムは大きくなるし、臆病であれば臆病であるほどリスク・プレミアムは大きくなるということになる。
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線形インセンティブ報酬
だがしかし完全な固定給制にすると、組織はモラルハザード問題に悩まされることになる。
従業員が自らの作り出すリスクをまるで背負わず、組織や企業の様々な仕組みやブランドなどを利用して、自分のための利益のみを追求し出す。
「親方日の丸」だとか「鉄腕主義(倒産しない中国の企業の体質を表した言葉)」と言うように、収入が「決まり(法律)」によって保証されているような組織では、企業や組織の目標のために一生懸命働くインセンティブは生まれない。
クビにならない程度に仕事を適当にさぼり、内職したり怠慢プレーをしたりし始める(つまりこれがモラルハザード)。
そこで組織は従業員に対し、一部固定、一部歩合のような複合した報酬契約つまり「インセンティブ契約」を結び、従業員がまじめに働くように仕向ける。
その結果、以下のモデルができあがる。
w(賃金)=α(基本給)+β・(e+x+γy) ただしeは従業員の努力水準、xは会社自体の需要水準、yは業界全体の需要水準(要するにその業界の景気動向)である。
βはそれらに対する歩合給の係数で、この係数を特に「インセンティブ強度」という。
βの値が大きければ大きいほど、従業員に与えるインセンティブが大きいと言うことになる。
そして式が線型(つまりかけ算や足し算などだけでできている式。
定義としては、f(ax+by)=a・f(x)+b・f(y)を満たすような式)になっているのは、全ての業績の状態に対して一様なインセンティブを与えるためである。