リスク・シェアリングの原理
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それぞれ独立したリスクを持った二人以上の人間が、互いにリスクを分担しあうことによって総リスク負担費用を抑えることができる。
これを特に「リスクシェアリングの原理」と言う。
リスクシェアリングの原理は、全ての保険契約の基礎となっている考えである。
たとえば自動車事故にあう確率は、人間それぞれ独立している。
つまりAさんが事故に遭えばBさんも事故に遭うというような従属現象(つまりAさんの事故がある確率でBさんの事故を必ず引き起こす)ということはまず起こらない。
AさんはAさんで独立して事故に遭い、BさんはBさんでまた、独立して事故に遭う。
それぞれが独立して事故に遭うから、それぞれに適当な事故確率を設定でき保険料率を当てはめることができる。
だから多数の人間が保険に加入し、事故に遭う確率が独立であると、保険が上手く機能する。
たとえば株を買うとき、ナントカ商事と、その子会社と、その関連会社の株式を買うような事をすると、そのナントカ商事が潰れたら子会社や孫会社も影響を受け、たいてい全部損になってしまう。
けれどナントカ商事の株と、ナントカ商事とは全然関係ない中位の会社の株と、さらにそれらとまるで関連のない会社の株を買えば、どれかはダメになって損はするが、丸ごと全部損にはならない。
この場合、それぞれの株の安全性・危険性は独立している。
だから、リスク・シェアリングを考えるのが簡単になる。
簡単になればそれを調べる費用は安く済むし保険料率の設定やリスク・シェアリングも簡単になる。
だから、より条件のいい保険を提示でき、効率がよくなる。
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業績指標に基づいた支払方法
個人や組織が、他人のために行動するように動機を与える問題は、経済学では「プリンシパル(依頼人)=エージェント(代理人)問題」として知られている。
ここからしばらくは雇用問題におけるこの問題を考えることにする。
プリンシパルが雇用主で、エージェントが従業員である。
で前にも書いたとおり、従業員に仕事に対するインセンティブを与えるには、従業員の報酬を何らかの形で企業の業績にリンクさせねばならない。
が、しかしそれをするには従業員の仕事を客観的・明示的にハッキリ測定できなくてはならず、結局大抵の場合、企業や個人の業績に対して金銭的インセンティブが与えられるという形を取る。
つまり企業の業績が良く個人の寄与が大きければ、その者に与える給料やボーナスを増額し、逆に企業の業績が悪く個人の働きが悪ければ給料は下がりボーナスはなし、、という形である。
だが金銭的インセンティブは、企業の業績悪化によるリスクを従業員で分散して負担するということである。
だから給料を全てインセンティブ報酬にしてしまうと、個人のリスク負担は大きくなりすぎてしまう。
たいていの人間は「リスク回避的」であると考えられるので、業績が悪ければ給料0というのでは殆どの従業員が辞めてしまい、企業はもはやその体をなさなくなり、長期的な企業運営が不可能になってしまう。
だから各個人が背負うリスクは、不確実な収入の不確実性を回避できる程度にしなければならない。
が、そうすると今度は逆にリスク・シェアリングが非効率なものとなる。
リスクを均等に従業員に負担させると、個人が背負うリスクが大きすぎてしまうのでそれは小さめに配分しなければならない。
が、そうすると今度はリスク・シェアリングとしては非効率になる。
だから、企業はこの差を負担せねばならない。
これは企業にとっての損失である。
だが業績と報酬をリンクさせている企業は、従業員から優れた業績を引き出すことによって、その損失を取り返せると考えている。
そしてまたリスク回避的な従業員に支払う給料はその分安くつくので、企業はこれらの損失をいくらか埋め合わせているとも考えられる。