買収防止策のバリエーション
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1980年代から始まった企業の敵対買収「ブーム」は一方で、敵対買収を防止したり回避するための様々なアイディアを生み出した。
テイクオーバーの防止策として挙げられるのは、
- ポイズン・ピル
- 差別投票権
- 焦土戦術
- リストラクチャリング
- 組み分け取締役会
- 絶対多数決ルール
- 従業員持ち株制度
などがある。
まずポイズン・ピルとは「毒薬」が元の意味で、テイクオーバー防止のための逆療法を表している。
企業の経営者は乗っ取り側がある水準まで株式を買い占めた場合、「株主権利プラン」などと称して株式(あるいは企業に対する他の金融請求権)を安価に取得できる権利を株主に与える。
これによって、株主が株式を手放しにくくし、企業買収のコストを引き上げるわけである。
だが実証結果からポイズン・ピルを採用した企業の株価は下がり、企業価値は大幅に下落することが多いので、この策は結果的に経営陣の保身にのみ役立ち、株主の利益を損なうという意見がある。
次の「差別投票権」とは、長期保有株式に追加投票権を与えて新参株主の発言権を小さく押さえる方法である。
また「リストラクチャリング」とは、買収された後に買収コストを回収するために売却されるだろう部門をスピンアウトさせたり、現金残高を減らすなどして、買収者の買収後のプランを妨害するアイディアである。
そして「組み分け取締役会」とは、たとえば取締役を半分ずつ交代する決まりを作り、買収してもすぐには企業の支配権が移動しないように図る、という手段である。
テイクオーバーの防止には、たとえば90%以上の賛成がなければ企業コントロール権の移動ができないなどと言う「絶対多数決ルール」や、従業員持ち株の比率を上げる(従業員はたぶん現経営陣を指示するだろうから)という方法も用いられる。
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ゴールデン・パラシュート
ゴールデン・パラシュートとは、経営者がやめる際に様々な恩典を与えるという規定である。
これは経営者を働かせるための一つの手段で、つまり「所有が投資を可能にする」というパターンの一つのバリエーションである。
すなわち経営者のクビがいつでもすげ替えられるような状態だと、経営者は適当にしか経営しない。
努力して利益を出そうと有効な投資を行ったにもかかわらず、その見返りを受け取るときにはクビ、、、であれば、身を粉にして働こうとはしない。
だから経営者に企業の業績を上げるための努力を促すためには、なんらかのインセンティブを与えねばならない、そのための規定である。
このことが経営者の乗っ取り防止努力にも結びつく場合がある。
というのもゴールデン・パラシュートによって経営者が投資するのは企業特殊性を持つ(要するに他の企業では役に立たない)ような努力が多いと考えられる。
他の企業に行けばそんな報酬を受け取れないような経営者なら、テイクオーバーを仕掛ける企業側はおそらくクビにするだろう。
だから経営者は自らの「権利」を守るためにも、激しく乗っ取りに抵抗するだろう、というのである。
だがこの施策は株主の負担を増大させる。
乗っ取りの対象になるような企業の業績はたいてい悪く、経営者はそれまで大した業績を上げてこなかったのに、多額の退職金を支払わねばならないというのだから、株主への配当はそれだけ減る。
またあまりにも高額なゴールデン・パラシュートであれば、退職金目当ての取締役交代も頻繁になり、天下りした官僚が数年ごとに多額の退職金をかっさらっていくようなことも起こるようになる。