インフルエンスコストの削減
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インフルエンス活動とは一種の「選挙キャンペーン」である。
利害関係者は自らの事情を熱弁を奮いながら、権限者に陳情するのである。
これを制限し、レント・シーキングに費やされる時間と資源を限定するために、レント分配にかかわる決定は一度で終わりにするということがよく行われる。
つまり決定が行われた後はそれに関するインフルエンス活動は終了せねばならないという事で、審議済みとされるわけである。
そしてまた、同じ目的のために問題となる情報などを非公開にするという場合も多い。
たとえば従業員全員の給料などはたいてい公開されない。
というのもそれはまさに「レントの争奪戦」の火種となるからである。
明らかに業績を挙げている者と、そうでない者に対する報酬が逆転していれば誰だって不満に思うだろう。
そして順送り人事や本社に居るというだけの理由で、むやみやたらに高給を取っている人間がいたら、やはり問題になるだろう。
だからそういう議論に火をつけないために、こういう情報はたいてい非公開にされる。
つまり「コミュニケーションの制限」が、インフルエンス活動による無駄を削減するのである。
だがしかしこれはもちろんフェアな話ではない。
特に公共セクターや公的組織には、これを当てはめることはできない。
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民主政治とインフルエンス・コスト
民主政治は情報の公開が原則である。
そして一度決定された議決でも、状況が少し変わると大きな影響を受ける者が必ず出てくるので、その変更をまた考えなければならなくなる。
だから民主政治では膨大なインフルエンス・コストがかかることは避けられない。
公聴会や説明会が頻繁に行われるのはそのためであるある。
このようなインフルエンス・コストを押さえるには、結局、均等分配法しかない。
働かない者にも働く者にもほぼ同じ報酬を与えたりするしかない。
言ってみれば「ばらまき」で、サミットの首脳会談を沖縄で行い、蔵相会談を宮崎で行い、外相会談を福岡で行うなんていうことである。
そうでもしないとインフルエンス活動がすぐに活発化し、レントの分捕り合戦が始まってしまうのである。
独立採算制とインフルエンスコスト
また一般的ではないが、別の方法としては「独立採算」も有効である。
つまり不採算部門は思い切って独立(スピン・オフ)させてしまうと、本社の権限を持つ部署は余計なインフルエンス活動を落ち目の部門から受けなくても済む。
インフルエンス活動やインフルエンス・コストを削減するには、「独立採算制」を堅持し、任務の割り当て方法を不変とすることである。
つまり独立採算制を堅持すれば、その部門は自らの部門の売り上げによって計画を練らざるを得なくなる。
本部からは金がでないのが決まっているのであれば、インフルエンス活動など意味はない。
そして有利なポジションを占める順番が、たとえば年齢順だとか業績順であると決まっていれば、それを変更する努力は実り少ないものとなるので、インフルエンス・コストは削減できる。
日本の年功序列制賃金なども、均等的な賃金(狭い範囲での格差の小さな賃金体系)、限られた外部雇用機会(転職しにくい)、学歴などによる昇進速度(客観的シグナルによる席次の決定)、などといった制度でインフルエンス活動を抑えインフルエンス・コストを削減するのに役立っている。
もちろんそのような制度が企業の業績にどう結びつくかは疑問だが。