アメリカの繁栄はCEOの業績給と関係があるの
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二年前の夏に、アメリカの繁栄はCEOの業績給と関係があるのでしょうか? というメールをいただいて、書いたわたしの見解。
今読み直すと結構興味深いので再録します。
まず管理者とインセンティブ契約を結ぶようになってから、CEOの報酬が値上がりしたということですから、それがCEOにインセンティブを与え、企業を成長させる「強い」動機となった。
そしてそれがムラ化しつつあった企業を、効率を重視する機能的集団に作り直させた。
その過程で労働者の賃金の大幅ダウンや大量解雇が起こり、堺屋太一さんの「大変な時代」と言う本では、1980年代後半から1990年代の前半にかけて年収3万ドルから8万ドルを得ていた工場労働者(熟練工)がどんどん解雇され、殆どが年収2~3万ドルの職に再就職したということです。
もちろんこれらは日本を始めとする極東・東南アジア諸国がアメリカにドンドン安い商品を輸出し、その結果製造業が生産拠点を海外に移転させたために起こった現象なんですが、その結果アメリカ社会は全社会的に非常なコストダウンを強いられた。
何せ買い手は二~三万ドルしか持ってないわけだから、その二~三万ドルを巡って社会全体が非常なローコスト指向になったわけです。
その結果アメリカ企業は従業員に高い賃金を支払っている会社がドンドン潰れ(セブン=イレブンなども潰れてイトーヨーカドーが買った)代わりに低賃金労働者をたくさん雇って営業する企業が勝ち残った(マネージャーなども低賃金を基本給として、業績によって歩合を受け取るという形のインセンティブ契約で雇用されたが、それでも以前より低賃金になった)。
そういうわけでアメリカ国内のサービス業で働く労働者の賃金も、やっぱり二~三万ドルレベルになり、中途半端に高い給料をもらう人間がいなくなった。
社会がローコストになったらその分企業は動かせるお金が増える。
だから、それが今度は投資に回り社会が活性化した。
そして普通に働いても二三万ドルしかもらえないから、人々は株に投資したり、或いは事業を興して経営者になるという選択をする者が増えた。
これはつまり開発経済学で言うところの「黄金期」がアメリカに出現したということで、一気にサービス業や情報関連産業が発展した。
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先進国では工業が発展し、あまり余剰労働力がない。
だから人をたくさん雇おうとすると賃金上昇が起こる。
しかし途上国では農村に余剰労働力が眠っているので、その余剰労働力のプールが枯渇するまで安い賃金でいくらでも労働者を雇うことができる。
これを特に「黄金期」と呼んだりする。
何せ人件費は安くしかもたくさん人を雇うことができる上に、その労働力は途上国の労働力とは異なり、訓練を十分に受けた労働力で、読み書き算盤はもちろん、パソコンや機械も扱えるから、生産性がとんでもなく高い。
気分によって仕事をしなかったり欠勤したりすると言うことが少ないし、製品や仕事に対する誇りや愛着も持つ優れた労働力を、以前より安く使って事業を行うことができる。
政府の後押し(失業保険の給付(何とアメリカでは特例として二三年くらいの長期に渡って給付する業種もあったらしい)もあったから、これでアメリカの企業が発展しないわけがない。
だからアメリカの企業は大成長した、、、こんな説明でよろしいでしょうか。
日本の場合はこれから賃下げが始まり、社会全体のローコスト化が始まるところなのだとボクは考えています。
ボクはこれまでずっとバイト生活しかしていないのでショックは全然ないですが、今まで高い効率性賃金をもらっていた人にとっては大問題でしょう(将来確実にそう言う収入があるということを前提にローンを組んだりしているでしょうし)。
卑近な話ですがスーパーでは百円均一セールを欠かさないようになってきましたし、ボクがたまに行く寺町京極の回転寿司屋もいつの間にやら一皿120円から100円に値下げしていたので、そういう動きはもうとっくに始まっているようです。
(^_^;) サービス業で働く人の賃金が2~3万ドルになった、、、ということは、月給レベルで考えると15万~25万ということですね。
もし日本のリセッションがアメリカの90年台半ばと同様だとすると、まだ賃金レベルは下がる方向と言うことになりますね。
邱永漢さんの筆によると、利益を上げているのは中国や東南アジアで大量生産して日本に逆輸入している会社と、ファミレスなどの外食産業だけだということだから、そういう会社に就職するとか、そう言う会社に投資するとか、そういう企業をつくるとかしないということなんでしょうか。