1850年より以前にはピラミッド型に人を配置し上に行くほど権限が大きくなるようなヒエラルキー構造を持つ組織と言えば、イギリス教会と各国軍隊以外にめぼしい組織など無かった。 もちろんそれによく似た企業組織はあるにはあったが、何か問題が生じると原則的には「経営者が乗り出していって」「陣頭指揮を執り」「経営を正せばよい」といった程度の組織だった。 資本を持つ者が社長であり営業部長であり工場長であるとい...
第7章:組織のデザインとダイナミクス記事一覧
19世紀中頃までは大規模に商品を生産しても商圏が狭く、規模の経済性によるメリットはあまり大きなモノではなかった。 だが全国や世界などといった広範囲に商品を流通させることができるようになったことで、企業は大量生産によるメリット(規模の経済性)を獲得し始めた。 メリットがあることが理解されると、企業は競って新しい生産方式を採用し、生産力の増強と生産性の向上を図った。 そしてその発展は生産技術の発展だ...
1850年以降、企業の生産力は爆発的に増大した。 それは蒸気船・鉄道・電信技術という三つの発明によって引き起こされた大変革であった。 それまでの帆船での海運は、運送計画を立てるにも非常に不安定で何時商品が届くかわからず大ざっぱなモノであった。 しかし自力でグイグイ航行できる蒸気船の発明で、海運計画は以前と比べて非常に容易に立てられるようになった。 そして鉄道の発達も、それまで地形などの条件によっ...
20世紀初めの巨大企業は狭い範囲に事業を絞っていた。つまり石油会社は石油だけに、製鉄会社は製鉄だけに、、と専門分野に仕事を特化していた。 フォード自動車はたった一色のT型フォードしか生産していなかったし、ジレットは剃刀と替え刃だけを生産していた。 しかし事業部制を採用した上記四社は、ドンドン事業を多角化していった。 GMは自社の技術が使えるような分野にドンドン事業を展開し、乗用車だけでなくトラッ...
この当時(1980年代)は今のように、世界各国からフリーハンドで部品を買い集め、労賃の安い国で組み立てて売るなんていうことが殆ど行われてなかった。 部品自体、先進工業国で作るのと中進国で作るのとでは品質に置いて雲泥の差があり、またそれが同業他社に対して販売上の強力なアドバンテージ(優位)となる時代だった。 企業は自社内あるいは系列企業グループ内で基幹部品を開発して生産し、組み立てて売る。 部品を...
20世紀における企業組織の最も重要な変化とは、第一次世界大戦後に導入された「事業部制」である。「事業部制」とは個々の事業部の長が自分の部の業績に責任を負い、より上位の経営者に対して報告を行う制度である。上位の経営者は事業部長の業績を評価し、各部門の活動をコーディネートしそして企業全体の戦略を立案する。 このような事業部制は、GM、デュポン、シアーズ・ローバック、ニュージャージー・スタンダードオイ...
企業が組織を事業部制にすると、各部門間のコーディネーションがより重要な問題となってくる。 たとえばジェネラル・モーターズがスローンによって再編成される以前には、ビュイック・キャデラック・シボレー・オークランド・オールズなどの各生産事業部長には、独立した権限が与えられていた。 しかし各生産事業部間や販売部門との連携(コーディネーション)はあまりとれておらず、中央本部にはそれぞれの部門の業績評価やコ...
事業部制を効率的にデザインするためには、次のような要件が必要とされる。1)各事業部を明確に規定し、必要な情報が報告されるような体系を作り、コーディネーションが上手く機能するように事業部と本部を分けねばならない。2)適切な行動が促されるように、情報・決定・評価・報酬の体系が構築されなければならない。3)費用と便益を考慮して、企業が携わる活動範囲を選択せねばならない。 で、事業部制を成功させるために...
一つの財を生産し販売するには何段階もの工程がある。それを簡単に書くと、<上流>{原材料}↓{部品} ↓{システム部品} ↓{最終組立} ↓{流通} ↓{販売}<下流>となる。 これらの工程の殆ど全ての工程を、一つの企業でやってしまおうというのが「垂直的統合」というやり方である。 鉱山から鉄鉱石と石炭を掘りだして鉄を作り、それを元にシャフトや鋼板にする。またガラスやその他の原材料を山から掘り出して...
企業がインプットしなければならない材料を自社内で製作しない理由の三つ目は、コア・コンピテンスである。 コア・コンピテンスとは、異なる時点での製品を一つのバリエーションとして捉えるとき、つまり一昨年の製品、去年の後継製品、今年の後継新製品、といったモデル・チェンジなどを行う製品などを範囲として考えるとき、そのコアにある特別な生産技術(コンピテンス)のことである。 たとえばある企業が新しい事業に進出...
生産のための部品を、市場から調達できれば安く付く事が多い。 だがそういう市場に競争的なサプライヤーがたくさん存在せず、また標準的な部品では自社の製品に間に合わないような場合には垂直統合(つまり自社製作)が意味を持つ。また自社での消費量が多く、自社内で製作した方が安く付くような部品の場合も垂直統合して自製する方がコストを削減できる。 現代の経済では技術が高度に専門化した上に、生産能力がとんでもなく...
商品やサービスを生産する場合に、その材料となる財やサービスの市場(インプット市場)が非競争的な市場であることがある。 こういった場合も垂直統合が意味を持つ。 部品の供給企業が複占・寡占などの状態にあって、しかも複占・寡占企業がお互いに競争していない場合、その部品の値段は限界費用よりはるかに高い複占・寡占価格で買わねばならなくなる。 高い値段で作った商品は当然高くなる。 しかもこの企業が10%のマ...
組織形態の一つとして協同組合と言うモノがある。 協同組合型組織は19世紀に現れたユートピア的共同体で、組合員を取引の対象とする組織であり、組合員による出資で成り立っている。 協同組合の活動方針は一般の企業のように出資額の多寡によって発言力が決まるわけではなく、たいていは組合員一人に一票の投票権が割り当てられる。 そうでない場合でも発言力は出資シェアには比例せず、取引高の多寡によって発言力が変わる...
アメリカでは自動車ディーラー、ガソリンスタンド、コンビニ、衣料店、ホテル、レストラン、納税申告サービス、レンタカー、銀行などを含む多くの事業がフランチャイズ制で営まれている。 アメリカでは30万以上の事業所がフランチャイズとして営業し、一店舗あたりの平均年商はおよそ50万ドル(1ドル=120円で、約6,000万円)である。 フランチャイズ契約を結んだ販売店は、本部企業のブランドを用いながら、小売...
フランチャイズ制とは、本部のブランドと信頼度をフランチャイズ店に供与し、フランチャイズ店全体でその価値を維持するシステムである。 東京でも大阪でも、北海道でも福岡でも、水準以上の同質のサービスを受けることができるというのが、フランチャイズ制小売業の強みであり「売り」である。 だがしかしその「評判」は、もろいものである。 一度しっかりとしたブランド・イメージか確立してしまったら、フランチャイズ店の...
通常の市場では、最も低い価格、或いはもっともコストパフォーマンスがよい価格で財やサービスを提供する企業は、「販売増」と言う形で報酬を受け取る。 顧客から支持された結果、販売量が増え、それにつれて利益も増える。 そうであるからこそ、多くの企業はコストパフォーマンス向上を目指し、市場でそれを実証しようとする、これを特に「市場インセンティブ」と呼ぶ。 がしかし、特殊的な資産投資を必要とするような場合に...
日本の自動車産業は、下請け会社を組織化し、系列化によって垂直統合を行ってきた。 この方法では、 垂直統合の一つの問題点であるホールド・アップ問題の発生も、押さえることができた。 部品の発注は大きな問題などが無い限り次のモデル・チェンジまで継続するために、特殊的な資産に対する投資の回収もたいていは可能になる。 要するに、あらかじめ生産量の総量が分かっているため、それ以上の過剰投資が抑えられると言う...
韓国のラッキー・ゴールドスター社は、自社で生産する化粧用クリームの容器の「キャップ」を自社で作り出したところから、様々な方面に事業を展開していった。 これはLG社が自社の製品のための部品を調達しようとしても、それを請け負う企業が韓国国内に無かったからで、自社でそのような特殊的な投資を行うしかなかったからである。 だがキャップだけでその投資を回収することはできないから、同社はキャップ以外の用途を求...
これまで見てきた企業の拡張の方向は、規模と範囲の経済性、コア・コンピテンスと言う要因によって決定されることが多かった。 韓国のラッキー・ゴールドスター社は前述したとおり、自社の製作する化粧用クリームのための容器の「キャップ」を自社で作り出したところから様々な方面に事業を発展していった。 LG社の場合は非常に補完的な(1+1が3になるような)規模と範囲の経済性を追求した結果である。 つまり現在手持...
企業提携の目的には、4タイプの目的がある。 一つ目は、海外市場にアクセスするためだ。 一から海外拠点を築くと時間もかかるから、既に海外に進出している企業と提携する。 二つ目は、製品のラインアップを充実させるために、他社OEMを利用する。 たとえばトヨタは軽自動車メーカーやトラックメーカーと提携しているが、これは自社で軽自動車や大型トラックを作っていないからだ。 では残りの2つは何か。3)規模の経...
二十世紀末の激しい技術改革と進歩は、多くの側面で組織に影響を与えてきた。 たとえば研究開発と製造過程の両方で、規模の経済性の重要性が増した。 巨大な研究開発コストや、投資リスク負担を分担するために、世界的な様々な企業間での提携が模索された。 このことは企業の境界を不明確にし、組織間のコーディネーションの必要性を高めている。 また情報通信システムと高速航空運送の著しい発達は、通信コストと運送コスト...
かつて、世界の企業は日本やアメリカの企業を一つの見本とした。 がしかしどちらの企業やシステムも激しい変革の中にあり、どのような変化が訪れるかわからない。 人的資源的にも高齢化が進む日本では、労働者の外部市場が不活発であったため熟練労働者の再雇用が問題になっているし、若者は若者で「働いた分だけすぐにくれ。将来の高給ではなく、今」と言い始めている。 他の国々でも女性の社会進出が進んだために、妻が夫の...