さて今回からは最近何かと話題のモラル・ハザードです。 去年の三月末にここを読んだ頃には、モラル・ハザードなんて言う言葉はまだ殆ど世間に浸透しておらず、ニュースステーションで久米宏さんがこの言葉を口にしただけで「へえーっ」と思ったもんでしたが、この一年で一ぺんに定着してしまいましたね。 ただ最近よくマスコミで取り上げられるモラル・ハザードと、この組織の経済学で取り上げられているモラル・ハザードとは...
モラルハザード記事一覧
たとえば人は病気になったとき、薬を飲んだり医者にかかったりする。 だがたいていの人には薬や医学の知識と言ったモノを、あまり持ち合わせてはいないから、薬局のオバサンや医者の言うことをかなりの割合で「鵜呑み」にせざるを得ない。 薬局のオバサンが「これがいいよ」と言えば「そうですか」と言ってそれを買って帰るだろうし、医者が「こうしなさい!」と強く言えば、ある程度はその通りにせざるを得ない。 だがしかし...
アメリカ貯蓄貸付組合S&Lは、民間から資金を集め、それをまた民間に貸し付ける一種の「銀行」であった。 S&Lの資金運用には厳しい制限が課せられていて、そのため投資は地域住民に対する持ち家を担保にした住宅抵当ローンであった。 ところが1980年代になると、多くのS&Lは商用不動産への貸付や、ジャンク・ボンドと呼ばれるハイリスク・ハイリターンの危険な投資へと投資を切り替えていった(←ここがまず一つ目...
S&Lに限らず、金を貸す組織は借り手を徹底的に調査する。 借り手の資産状況や、資金の使途。信用調査や、担保、返済方法、事業計画や定期的な財務報告などを提出させて、借り手の計画が妥当なもので、予定通り金を返してくれるかをしっかり調査する。 金融機関や組織の金だって、コストを掛けて集めた金だし、機関や組織の運営にも金がかかる。 だからそうやって調査をし、判断をし、予防策を講じる。 しかし80年代のS...
みちもと様、初めまして。O長と申します。 いつもMMの配信をありがとうございます。人間社会の在り方、ネットワーク、組織論という方面に最近関心が深まり、この6月くらいからかMMを購読させていただいており、毎回興味深く読ませていただいております。 ところで第043回に掲載されていた「S&L問題とモラル・ハザード」の項を読んでいて、次のようなことを感じました。 この「S&L問題はモラル・ハザードではな...
モラル・ハザード問題が最初にハッキリ認識されたのは、保険業界においてであった。 しかしこの「モラル・ハザード」という用語が、保険業界以外で広く用いられるようになったという事は、この問題が人間社会に広く普遍的な問題であることを意味している。 それはおそらく広い意味での「保険」が世の中には広く存在するからであり、それが「公共財」や「非排他財」などといった財の性質と相まってより問題をややこしくしている...
敵対的買収とは「現行の経営者や取締役会に対する不満から、法人の所有権を変更すること」である。 買収の方法は、現行の株主から大量の株式を取得し、取締役会の選挙を自由に操作することで行われる。業績が低迷している、あるいはもっと良い業績が残せるはずであると考えられる企業が、それよりずっと低いパフォーマンスしか示していない場合、それは経営者や取締役会が「無能である」と考えられる。 そういう企業が存在した...
モラル・ハザードの三条件 モラルハザード問題が発生するには、三つの条件が必要である。 一つ目は「取引を行う双方に、トレード・オフの状態があること」である。 すなわち何かの取引をすることによって、双方の状態が以前より良くなる(Win-Win関係などという)のではなくて、一方が得をすればその分もう一方が損をするというような場合(トレード・オフ)である。 修理工の例で言えば、必要がないのにラジエータを売...