経済組織記事一覧

組織の構成 組織とは、人の集まりである。 人の集まりと言っても、ただの人の集まりではない。 ある特定の目的や欲望を持った組織幹部と、組織に所属することによって何らかの利益(プロフィット:金銭的利益)や便益(べんえき=ベネフィット:金銭だけでない広い意味での利益)を得ようとする人間で構成された集まりである。 たとえば企業幹部や経営者は株主から出資金を募り、その資本で資本財を買ったり従業員を雇ったりし...

 今回は読むのでR!で定義が問題となった「ラチェット効果」の話です。 語句の定義やその含蓄(インプリケーション)は、学問分野によってかなり異なるようなので、このメルマガ上ではソ連の計画経済体制から観察されたラチェット効果をそのイメージ(定義)といたします(確かh11年度の経済白書でもそのような意味合いで用いられていたように思うが)。共産主義経済と財やサービス 20世紀初頭、世界は共産主義運動によっ...

経済学的組織論における最も基本的な分析単位は「取引(transactionトランザクション)」である。 モノ(財)の所有やサービスが、ある人間から別の人間の手に渡ることがすなわち「取引」であるが、この「取引」が全ての価値を決める基準である。 古典経済学やマルクス経済学といった百年以上前の古い経済学では、モノの価値や価格を非常に固定的に捉えていた。 すなわちモノの値段は「それに投入された労働価値」に...

「全ての価値は労働価値の合計によって表しうる」というのが「労働価値説」によるモノの値段の説明であった。 確かに全ての財やサービスの価格は(原材料の価格の合計)+(投入された労働量)=(モノの値段)という形で表しうるし、原材料だって労働の成果であると考えることができる。 だから、財やサービスの価値は労働価値の総計であるといえる。 これを数式で表せば、Xjを各労働者の労働投入量、ajをその労働者の労働...

 経済学的組織論の分析対象がなぜ「取引」かというと、財やサービスや貨幣(あるいはその所有権)が「取引」によって移動するモノだからである。 取引によってモノの値段や財やサービスの消費量が決定され、それに基づいて次期の生産水準やサービス水準が決定される。 この考えは、市場が価値を決めるというような市場「万能」主義とは一線を画す。 なぜなら取引主体の分析では、市場システムを通した取引も、市場を通さないよ...

限定合理性 人間は合理的な生き物である、、、という説は、あんまり納得のいく説ではない。 ボクなどしょっちゅう「何であの時、あんな事をしたんだろう?」「何であの時、こうしなかったのだろう?」なんて後悔する。 だから、自分が合理的に行動しているだなんて、お世辞にも言えない。 なにしろこの正月も、久々にやったパチンコで大負けして、さらにそれを取り返そうとしてまた負けるというような大惨敗をしでかしたばかり...

分業と専門化 我々は、自ら必要な財やサービスを全て自分で生産するよりも、専門化された生産組織によって財やサービスを生産し、それを別の専門化された生産組織によって生産された別の財やサービスと交換する方が、より安く、よりバラエティに富んだ生産を行えることを知っている。 そしてそれは専門化された生産組織の内部でも同様で、アダム・スミスの「諸国民の富」においても、ピン工場の分業による仕事の専門化の恩恵が紹...

 何と何をどう組み合わせてどう効率の良い生産をするかがコーディネーションの問題であった。 しかし効率的なコーディネーションを行うためにはまず、そのための情報を集めねばならない。 いくら有能なプランナーやコーディネーターがいても、効率的なコーディネーションを行うための基礎情報や現在状況の情報が手に入らねばどうしようもない。 だがそう言った情報は大抵現場にある。 製造に関する情報は製造現場にあるし、販...

 コーディネーションと組織の構造は密接な関係にある。 と言うより組織の各セクションのの役割分担を決めるのがコーディネーションであり、構造が異なればコーディネーションの形が変わるのは当たり前である。 たとえば中央集権的な構造を持つ組織では、コーディネーションは余り必要でない。 中央(本社)と末端(現場)の関係は言ってみれば主人と奴隷の関係にある。 だから、報告と命令だけを徹底すればよい。 だがそれで...

 企業内で市場価格に似せた移転価格で取引が行われるということは、市場による取引システムが組織内での取引より妥当であるということを意味している。 だとしたら、その取引を何も企業組織内で行わなくても良いはずである。全てとはいわないまでも、大部分の取引が市場で行われる方向に進んでもおかしくはない。 そうなると必然的に企業組織は必要最小限の機能に特化され、小さくなっていくはずである。 だが実際はそうではな...

 ロナルド・コースは、取引には「取引費用(トランザクション・コスト)」なるコストが必要で、企業や組織の形態はその「取引費用」が節約される形に決まってくる、というようなことを述べた。 つまり企業内部で調達した方が安く付く財やサービスの取引は組織内で行われるようになり、外注の方が安く付く取引は組織外で行われる、、、その結果その組織の形が決まってくる、と言うのである。 しかしコース自体は取引の形態につい...

 取引と一口に言っても、様々なバリエーションがある。 単純に日常品を売り買いするのも取引だし、雇い主が従業員を雇うのも労働力の取引である。 前回取引費用には「調整費用(コーディネーション・コスト)」と「動機付け費用」があると書いたが、これらの費用を決定するのも実はそれらの様々な取引の性格によるのである。 取引費用を左右する要因について書いてみよう。1)特殊的投資が必要な取引かどうか?  取引には特...

 資産効果というのは消費者が持っている資産の変化によって購入する財やサービスやその購入量が変化するという現象のことである。 収入が増えると人はその分贅沢な行動をとりやすい。 今まで買わずに我慢していた高価な商品を買ったり、最小限ですませていた以上にものをたくさん買ったりということをよくする。 このような「持っている資産の変化が消費者の選択を変化させる効果」がすなわち「資産効果」である。 貧しい人は...

 S製薬がドイツのベーリンガーにTOB(公開株式買い付け)で発行株式の35%を押さえられてしまいました。 その話は今年の初めに同社で働いている大学時代の友人から「多分TOBは成功しそうだ」と聞いていたんですが、市場価格より四割ほど高く株式を買うぞと言われたら、一般の株主は株を売っちゃうモンなんでしょうね。 今までは日本の社会全体が高度成長していて、株式の額面増資(たとえば株主は企業が増資する場合に...

 二人の人間が金や資本を投入して事業を行うとする。 そしてその結果得た所得をそれぞれ分配するとする。 投入量の合計をyとし、それによって得られた収入をPyとする。この時二人に分配する収益をそれぞれ x1、x2とすると、当然 x1+x2=Pyとなる。 ここで二人の投入した投入物(お金とか労働とか建物とか機械とか)を金銭で表したものをv1、v2とすると、二人が事業を行って得た利益は、それぞれ x1-v...

 従来の経済学や経営学では「組織が明確な目的を持っている」ということを暗黙の仮定としておいていた。だがしかしそれは本当だろうか? たとえば普通企業と言うモノは「利潤を最大化させることを目的としている」と一般に信じられている。「営利主義」「金儲け主義」「利益優先」によって多くの企業が経済外部性を無視し、公害をたれ流したり、欠陥商品を消費者に押しつけたり、はたまたトヨダ商事事件のように年寄りをだまして...