ソローの残差・成長会計分析
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ソローの成長モデルにおいて、経済成長は技術進歩によってもた
らされる。それは確かに前回の労働増大的技術進歩モデルによって
示された。
だがしかし技術進歩と言っても労働増大的技術進歩以外の進歩、
すなわち生産関数F(K、L)の向上による技術進歩についても考
えねば片手落ちかもしれない。
今回はだから、生産関数F(K、L)について少し配慮したモデ
ルを考えてみる。
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■生産要素の増加
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技術進歩について考える前に、まず技術進歩がない場合の生産要
素(すなわち資本と労働)の増加について考えてみよう。
たとえばある状態から資本がΔKだけ増加したとしよう。
そうすると全体の産出量Yはどれだけ増えるだろうか?
これは資本の限界生産物、すなわち資本を一単位増やしたときに
増える生産物の量MPK(マージナル・プロダクツ・オブ・キャピ
タル)とΔkをかけたモノに近似することができる(あくまでも近
似)。
つまりMPK×ΔKがΔYである。
同様に労働Lがある状態からΔLだけ増えたとしよう。
そうすると同様のパターンで、産出高はMPL×ΔLだけ増える
ことになる。
そうすると資本と労働が変化したときの産出量Yの変化分ΔYは、
ΔY = MPK×ΔK + MPL×ΔL
と表すことができる。
で、この式の両辺をYで割って少し変形すると、
ΔY MPK×K ΔK MPL×L ΔL
―― = ―――――・―― + ―――――・―― …(*)
Y Y K Y L
となるが、ここで MPK とか MPL というのは何だっただ
ろうか?
この「」の No.006 と No.007 で
も登場したが、企業は資本をMPK=R/Pまでレンタルし、労働
をMPL=W/Pまで雇い入れるということであるから、実はこれら
MPK、MPLは、それぞれ「資本の実質レンタル料」「労働の実
質賃金」に等しいのである。
とするとMPK×Kは資本への総報酬であり、MPL×Lは労働
への総報酬である。
つまり(復習になるが)
Y=(MPL・L)+(MPK・K)+EP
で、生産関数が規模による収穫一定である場合EP=0となるので
Y=(MPL・L)+(MPK・K)
で(MPK×K)/Yは総産出に占める資本の割合(資本シェア)、
(MPL×L)/Yは総産出に占める労働の割合(労働シェア)であ
る。
資本のシェアをα(0≦α≦1)とすると、EP=0の場合、労働
シェアは1-αとなるので、(*)の式は
ΔY/Y = α・(ΔK/K) + (1-α)・(ΔL/L)
と書き換えることができる。
アメリカの場合、資本のシェアは約30%であるので、資本が10%
増加すると総生産は3%増加し、労働が10%増えれば総生産は7%
増えることになる。
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技術進歩
ところが実際のアメリカのGDPの伸びは年平均3.2%であり(19
50年から1992年)、それは資本と労働の増加の約0.8%と約1.0%の合
計より、約1.3%も多くなっている。
この約1.3%の増加分を「全要素生産性(トータル・ファクター・
プロダクティヴィティ)」と呼ぶが、これは生産関数F(K、L)
の係数として考えることができる。
すなわち
Y=A・F(K、L)
のAがそれである。
全要素生産性とは、技術のあらゆる進歩による生産性で、単純な
技術進歩(技術革新)から人的資本の向上(教育効果)までの様々
な全要素に渡る生産性を意味し、資本の増加や労働の増加では説明
できない成長要素分として計算される。
つまりこれは計測できる資本ストック量の増加や労働量の増加を
差し引いた経済の「伸び」であり、
ΔA/A =
ΔY/Y - α・(ΔK/K) + (1-α)・(ΔL/L)
である。これを特に「ソローの残差」と呼ぶ。
これにより、経済成長は
{経済成長}={資本の成長}+{労働の成長}+{技術進歩}
と言う風に分解して理解することができるのだ。
1956年から1992年までの日本経済は、年平均5.6%もの実質経済成
長を成し遂げたが、そのうち資本の成長が1.8%、労働の成長が0.5%、
技術進歩が3.7%となっている。
1970年代から日本の経済成長は減速したが、この時期資本の成長
率が著しく下がっているのが見て取れる(第二巻p58の表参照)。
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※因みに前回の労働効率EとAの関係は、
ΔA/A = (1-α)(ΔE/E)
となる。
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(つづく)
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今日の・・・
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{経済成長}={資本の成長}+{労働の成長}+{技術進歩}
と言うことは、経済成長が0ならば技術が進歩する分だけ総資本ス
トック量や総労働量がその分減少すると言うことになるな。
便利な製作機械ができると、その作業を請け負っていた職人たち
が失業するから、労働者が機械を打ち壊すラッダイト運動が起こる。