国民貯蓄と貿易赤字

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 前回は、政府が政府購入を増やしたり減税したりした場合の影響
を考えた。

 

 この場合国民貯蓄Sは減少し、S=I(r)+NFI(r)とrが逆相
関関係であることから実質利子率rは上昇する。

 

 実質利子率rが上昇すれば金を借りても儲かる事業が減るが、高
金利に引かれて資金は海外から流れ込む。

 

 ここでNX=S-I(r)=NFI(r)で、純輸出NXは実質為替レ
ートεと逆相関、つまりεが上がると輸出が不利になるからNXが
減るという関係。

 

 つまりNX(ε)=NFI(r)と言う関係でεが決まるので、資金
が海外から流入すると対外純投資NFIが減り、
NX(ε)=NFI(r)
という関係からεが上昇し、貿易は赤字方向に振れる(純輸出NX
が減る)ことになる。

 

 

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■投資条件の変化の影響 
----------

 

 政府が投資優遇政策などを行った場合はどうなるかを考える。
 まず実質利子率rと国民貯蓄S・投資I+NFIのグラフを描い
てみる。

 

 国民貯蓄Sは税Tや政府購入Gが変化しなければ不変だからほぼ
垂直に立つ。また実質利子率rが上昇するとそれに見合う投資機会
はその分少なくなるから、rと国内投資I+対外純投資NFIは逆
相関関係にある。

 

 この時政府が何らかの投資優遇措置政策を採ると、同じ利子率で
も投資が少し有利になり国内投資I+対外純投資NFIは増えると
いうことになるから、右下がりのI(r)+NFI(r)の関数は右へシ
フトする。

 

 以上をまとめると、以下の図のようになる。

 

 r(実質利子率)
  ↑        S
 |   \  \ |
  |    \→→\| 
r*|----------\--- \
  |      \ |\
 ↑|       \| \
r | --------------\  \I(r)+NFI(r)
 |        |\→→
 |        | 
0 ―――――――――――――――→S、I+NFI

 

 この時上図から実質金利rは上昇し、高金利によって資金は外国
から流れ込んで対外純投資NFIは減り、そして実質為替レートε
は上昇して純輸出NXが減る、、、という先週のパターンになる。

 

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輸入制限の影響

 

 色々な理由から政府は輸入制限を行う事がある。

 

 ある財(たとえば自動車)の輸入制限を行うと、その財を生産す
る業界(たとえば自動車メーカー)は儲けが確保できるが、他の財
を生産する企業はその分損をする、、、というのが小国開放経済の
モデルの結論であった。

 

 では大国開放経済ではどうか?

 

 輸入制限を行うと純輸出NXは増えることになる。が、利子率r
にはなんの影響もない。

 

 利子率rが変化しなければ国内投資Iも対外純投資NFIも変化
しない。

 

 純輸出NXが増えれば実質為替レートεが上昇するが、輸入制限
を行っているから純輸出NXは変化しない。

 

→実質為替レートεが上昇するのみ(結論)。

 

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■外国の政策
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 世界利子率r*に影響を与えることのできる国が利子率r'を引き
下げるような政策を採ったとする。

 

 たとえば政府購入Gを減らしたり増税を行ったりすると、国民貯
蓄Sは増え、その分実質利子率は下降する。

 

 実質利子率が下がると資金は他の国の高金利に惹かれてその国か
ら流出し、自国に流れ込む(すなわちNFIが減る)。

 

 NFIが減るとI+NFI曲線は左にシフトすることになるから、
自国の実質利子率rも下降する(これはまあ当たり前)。

 

 で、実質為替レートεはどうなるかというとNX(ε)=NFI
でNFIが減るから下図の通りとなり、実質為替レートεは上昇す
る(もちろん純輸出NXも減る)。

 

 ε(実質為替レート)
  ↑      ←NFI
 |   \ |  |
  |    \|  |
ε*|----------\  |
  |     |\ |
 ↑|     | \|
ε|----------|----\
 |     |  |\ NX=NX(ε)
 |     |  | \
0 ―――――――――――――――→NX(純輸出)

 

 

 

(長期分析編・おわり)

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