資本ストックの定常化(収束)

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 さて企業が資本を購入する、、すなわち生産設備を買い入れると
資本のストックは増えるが、それはやがて自体遅れの機械となる。

 

 もちろん単純に摩耗して壊れる場合もあるし、生産技術が発展し
て生産性が伴わなくなることもあるが、とりあえず資本には寿命が
あるのだとかんがえよう。

 

 その機械の減価償却率をδ(デルタ:小文字)とすると、たとえ
ば寿命が10年の機械であればδ=1/10となる。工場などの建物だと
寿命がもっと長いから、δ=1/25なんて場合もある。

 

 さてここで、ある年度の資本ストックの変化Δkを考えると、

 

 Δk= i-δk

 

であるが、i=sy=sf(k)であるから、

 

 Δk = sf(k) - δk

 

である。

 

 投資sf(k)と減価償却δkが釣り合うとΔk=0となるが、この
ような状態を特に

 

「資本ストックの定常状態(ステディ・ステイト)」

 

と呼び、この時のkをk*と書いて表す。

 

 δは一定の数値だからδkはkと正比例の関係にあり、sf(k)は
資本の限界生産力逓減によってy=logxみたいなカーブを描く。

 

 これらを一つのグラフに書き込んだときの交点が、k*である。

 

 つまり

 

i、δk        δk:資本の一人当たり減価償却
 ↑        /
 |    _――――――――sf(k):一人当たり投資 
 |   / /
 | / / ・
 | /   /  ・
 | / /   ・
 | /  /    ・
 |/ /     ・
 | /_____________
0     k1 → k* ← k2  k

 

なのであるが、最初の状態がどのような状態であっても結局kは次
第にk*に収束していくことになる。

 

 つまり当初一人当たりの資本量がk1(<k*)の状態であったす
れば、投資が減価償却を上回るから資本ストックkはk*までドン
ドン増える。

 

 一方最初がk2(>k*)であれば、減価償却が投資より大きいか
ら資本ストックはドンドン減り、結局k*で落ち着くことになる。

 

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貯蓄率と経済成長

 

 敗戦後、日本や西ドイツは第二次世界大戦による大破壊の中から
「奇跡の経済成長」を遂げて復活した。

 

 だが今回のモデルによる結論から導かれる分析では、これらの奇
跡は奇跡でも何でもない。

 

 それはただ両国の貯蓄率(すなわち生産の投資に回る割合)が大
まかに言って戦前と同様か或いはそれ以上であったからで、貯蓄率
(=投資率)が高ければ、どこから始めても資本ストックの定常状
態は高い位置で収束するだけである。

 

 両国の急激な経済成長は結局k1<<k*だったからであり、あく
までもそれはk*に収束するだけである。

 

 すなわち「どこまでも経済成長が続くわけではない!」というこ
とは、肝に銘じておくべきであろう。

 

 一般に、ある国の貯蓄率と一人当たり所得は相関関係がある、、
とは言えるが、貯蓄率だけに相関関係が生じているわけでもないこ
とも確かである(要するに他の要因も関係しているってことね)。

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