これまでの議論では、失業については捨象(しゃしょう:考えないこと)してきた。 特に経済成長を考えるとき、失業の問題は重要であったのだが、とりあえず完全雇用が達成されているという仮定の下に考えていた。 失業率が低く、無視しても問題とならない水準ならば良いが、失業はわずかでも社会的には様々な問題を引き起こすから、政治的には大きな問題である。 失業はなぜ起こるか。 そしてその水準はどのような要素によっ...
失業記事一覧
■失業の第一原因(復習)---------- 失業の第一の原因は、離職者が新しい職に就くマッチングに時間がかかることであった。 経済が変化し景気が変動する以上、離職した人間の数だけ就職先があるわけではない。 たとえそういう就職先があっても、離職者の求める就職条件を満たすかどうかもわからない。 だから離職者の再就職(マッチング)には時間がかかるのだが、このような失業を「摩擦的失業」と言った。 また...
賃金の下方硬直性には、三つの原因があると考えられている。 その三つとは「最低賃金法」「労働組合の独占力」「効率性賃金」の三つで、いずれも賃金水準がある一定水準以上下がるのをくい止める働きを持っている。1)最低賃金法--------------- たいていの熟練労働者は、最低賃金法で定められているより高い賃金を受け取っている。 だがしかし十代の若者や未熟練労働者は、最低賃金法で定められている賃金に...
■待機失業(復習)---------- 社会や経済が変化したり変動することによって、労働に対する需要・供給が変化する。 それによって失業者が新しい仕事を探して雇用契約を結ぶ(マッチング)のに時間がかかることを「摩擦的失業」という。 一方賃金の硬直化も失業の原因となる。 賃金は上げやすく、下げにくい。 だから労働市場の需給バランスによって定まる実質賃金の均衡水準より、労働者に支払われる賃金は幾分高く...
労働組合問題は、企業に雇用されている組合員グループ(インサイダー)と失業している労働者グループ(アウトサイダー)との軋轢(あつれき)を生む。 というのも組合運動によって不自然に引き上げられた賃金や待遇が、失業している労働者の再雇用に大きな障害となるからである。 労組活動によって均衡水準より高い賃金を受け取っているインサイダーは、失業しているアウトサイダーの雇用機会を不当に奪っている可能性が高い。...
----------■失業期間---------- 摩擦的失業は一時的な失業であり、比較的短時間の失業である。 それに比して待機失業は、失業者が時期を待っているのであり、比較的長い期間にわたる失業である。 失業者がどのような理由で失業しているか、、、すなわち摩擦的失業がなのか待機的失業なのか、、、という分析は失業対策を練る際に重要な問題となる。 前回も述べたとおり摩擦的失業はマッチングの不具合によ...
過去四十年間のデータによると、アメリカの自然失業率は徐々に上昇している。 十年間の平均失業率は50・60年代では5%未満であったが、70・80年代には6%を越えている。 失業率の上昇トレンドについての仮説はいくつか提出されているが、どれもハッキリした解明には至っていない。 仮説について見てみよう。1)ベビーブーマーと女性の進出による説。------------------------------...