貨幣とインフレーション:貨幣数量説

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 銀行や郵便局に夜遅くまで預金を引き出せるキャッシュ・ディス
ペンサー(CD機)が当たり前のようにできると、人々は貨幣に対す
る需要を減らす。

 

 これはもちろん給料が下がっても良いということではなく、財布
に必要以上の紙幣やコインを入れておかなくてもよくなった、、、、
と言う意味である。

 

 そうすると貨幣の需要関数 M/P = k・Y におけるkは
小さくなり、そして所得流通速度Vは大きくなる。

 

 というのも人々が貨幣に対する需要を減らしたから少ない貨幣し
か必要でなく、国民所得Yが変化しない状態で貨幣量が少なくなれ
ば、貨幣が経済をグルグル回る速度Vが増すからである。

 

 そう言う風に技術革新によって貨幣に対する需要は変化するが、
しかしそれはそんなに速い変化ではないから、ある期間において
「流通速度Vは一定である」
という仮定をすることができる。

 

 人々の暮らし方が急激に変化して経済に大きな影響がでるような
ことがなければ、この仮定は非常に意味がある。

 

 なぜならこの仮定によって、インフレーションと貨幣量の相関関
係が強まるからである。

 

 すなわち貨幣の数量方程式 M×V = P×Y を時間tで微
分(差分)すると、

 

 M・(ΔV/Δt)+ V・(ΔM/Δt)
   ≒ P・(ΔY/Δt)+ Y・(ΔP/Δt)

 

と言うことになるが、Vが一定であれば ΔV/Δt=0 になり、
さらにこの式に V=(P×Y)/M を代入すると、

 

 ΔM/M ≒ ΔY/Y + ΔP/P

 

となるから、つまり

 

{貨幣量の変化率}≒{実質国民所得の変化率}+{インフレ率}
           (実質GDP)   (GDPデフレタ) 
なのである。

 

 この説(貨幣数量説)でいくと、政府や中央銀行は貨幣の流通量
を調整することによってインフレをコントロールすることが可能に
なる。

 

 つまり実質GDPの成長以上に貨幣をたくさん供給するとインフ
レが生じ、それ以下だとデフレになる、、、ということである。

 

 実際の各国のデータでは、確かに貨幣供給量の成長とインフレの
間の正の相関関係が認められている。

 

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インフレ税

 

 貨幣の供給量の調整には通常、中央銀行による国債の売買が用い
られる。

 

 これは貨幣供給量が少ない場合に中央銀行が市中に出回っている
国債を買い入れることによって現金を市中に流し、逆に貨幣供給量
が過剰な場合には手持ちの国債を売りだして流通している現金を減
らすと言う方法である。

 

 だがしかし貨幣の供給を増やす場合には、もっと簡単な方法があ
る。つまり政府がジャンジャンお札を印刷して使ってしまうのであ
る。

 

 このように政府が「貨幣発行特権」を利用してお札を刷ると、当
然インフレになる。 

 

 インフレになるとお金を持っている人のお札の価値は下がるから、
下がった分だけ政府が「貨幣所有者」からお金を集めたことになる。

 

 これを特に「インフレ税」と呼ぶ。

 

 何にも税金を集めていなくても、政府がお札を刷ってそれを収入
として使ってしまえば、実質的に国民から税金を取ったのと同じに
なるのである!

 

 このような方法は特に戦時中に戦費の調達方法としてよく用いら
れ、アメリカの独立戦争のための戦費や第二次世界大戦時の日本の
戦費はこのような方法で調達されたと言う話である(その額なんと
170兆円!)。

 

 だが現在でも各国で同様のことが行われている。

 

 アメリカではこのような貨幣発行収入は政府の総収入の3%未満
であるが、イタリアやギリシャにおいては政府収入の10%以上がこの
「貨幣発行による収入」である。

 

 南米のハイパーインフレなども、結局この貨幣発行収入によって
引き起こされている。

 

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