貿易が無視できない場合の国民所得勘定
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ここまでは、貿易が無視できる範囲内の「閉鎖経済モデル」につ
いて考えてきた。
すなわち国民所得勘定(Y=C+I+G+NX)で、NX=0とおく
モデルで、国内で生産するモノの殆ど全てを国内で消費し、国内で
消費するモノの殆ど全てを国内で生産する、、、、という状態の経
済の話である。
だがしかし近代の国際経済において、GDPに占める輸出入の割
合は増加する一方である。
カナダやイギリスのGDPの四分の一は輸入に負っているし、国
内の生産力が膨大なアメリカ合衆国においても、ここ四十年の間に
輸入がGDPに占める割合は大きく増えた。(5%→10%)。
経済発展の分析や経済政策の策定において、国際貿易問題は最大
級の重要性を持つに至ったのである。
そういうわけで、ここからは「開放経済」について考えてみる。
つまりここからはNX≠0である。
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純輸出とは
閉鎖経済における国民勘定の恒等式は、
Y(総生産)=C(消費)+I(投資)+G(政府購入)
であった。
これらは全て国内で生産され消費されるものであったから、どこ
で生産されたか、どこで消費されたかについて区別をする必要はな
かった。
ところが開放経済を考える場合、それは大きな問題である。
すなわちある財やサービスが自国で生産されているか外国で生産
されているかは、経済を考える上で見逃せない。
だからそれぞれについて、国内(d:ドメスティック)と海外
(f:フォーリン)と言う風に意識を分けて考える。
つまり
・国内で生産された財やサービスの消費 → Cd、
・海外で生産された財やサービスの消費 → Cf、
・国内の財やサービスへの投資 → Id、
・海外の財やサービスへの投資 → If、
・国内で生産された財やサービスの政府購入 → Gd、
・海外で生産された財やサービスの政府購入 → Gf、
ということで、C=Cd+Cf、I=Id+If、G=Gd+Gf である。
で、輸出をEX(エクスポート)とすると国内総生産Yは
Y=(C-Cf)+(I-If)+(G-Gf)+EX
となり、これを整理すると、
Y=C+I+G+EX-(Cf+If+Gf)
となる。
Cf+If+Gf=IM(インポート)とおくと、IMは海外に対する
支払いであるから、ここで初めて「輸出-輸入」と言う項ができる
ことになる。
輸出(EX)-輸入(IM)の差を
「純輸出(ネット・エクスポート)」
と呼び、NXで表す。
国民所得勘定の恒等式を変形すると、
NX =Y-(C+I+G)
となるが、これは国内での生産額が国内向け支出を上回ればNX>0
となり、逆に国内での生産額が国内向け支出より小さくなれば
NX<0となることを示している。