政府負債と伝統的見解
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Y(GDP)=C(消費)+G(政府購入)+I(投資)+NX(純輸出)
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■政府負債と伝統的見解
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政府が負債を増やす場合の経済的影響については、論争がある。
その論争とは伝統的見解が正しいのか、それともリカード派の見
解が正しいのか? というものである。
政府が減税を行い、なおかつ支出を減らさないとすると、国債を
発行して減税分の資金を調達することになるが、この場合次のよう
なことが起こると考えられる。
つまり長期的には、
1.減税
2.減税が消費を刺激して消費Cが増え、そして貯蓄Sが減る。
3.貯蓄Sが減ると、閉鎖経済ではS=Iであるから投資にまわる
資金が足りなくなり、その分利子率rが上昇する。
4.利子率rが上昇すると、利回りの低い投資は割に合わなくなり、
押し出される(クラウディング・アウト)。
5.投資水準が下がると、低い産出量しか生み出さなくなるから、
給料も下がって消費水準も下がり、黄金律状態より悪い定常状態
で経済が推移することになる。
また短期的に考えるとIS-LMモデルを考えることになる。
IS曲線: Y = C(Y-T)+I(r)+G
LM曲線:M/P = L(r、Y)
<均衡利子率と所得>
利子率r
| \ /LM曲線
| \ /
r*| \/
| /\
| / \
| / \IS曲線
|
―――――――――――Y(所得・総生産)
1.減税(Tが小さくなる)
2.消費を刺激してIS曲線を外側にシフトさせる。
3.需要が増大して生産Yが増え、失業率が下がる一方、利子率rが
上昇。
4.利子率rが上昇すると、人々は消費するより投資した方がトクに
なるので貨幣需要Lが減り、貨幣供給量Mが一定であれば産出量Y
が自然水準まで下がった頃には価格水準Pがその分上昇して物価上
昇を招く。
またNX≠0の場合で考えれば、
1.減税
2.貯蓄Sの減少、利子率rの上昇。
3.外国からの資金流入量の増加。自国通貨価値の上昇。
4.自国通貨価値が上昇すると国際競争力が低下するので、純輸出
NXが減少。よって減税によるGDPの増加分をかなりの部分を相殺。
5.GDPが増加しなければ失業率もあまり下がらない。
結論:
「国内の資本ストック(貯蓄)が減り、対外債務が増えるだけ」
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リカードの等価定理
消費者の大部分が、将来を見据えて現在の消費水準を決めるとす
ると、現在の減税は将来の増税につながるモノと見るだろう。
「財政赤字を放っておいて減税するということは、将来何らかの形
で埋め合わせを行う必要があるのだから、、、」と。
これを「リカードの等価定理」という。
つまり国民が減税に対して将来の増税を予想する場合、政府が負
債で資金を調達することは、租税で調達することと同じである、と
いうことである。
となると、減税は消費に影響を与えない。
なぜならたとえば国民一人あたり一万円の減税を行い、代わりに
国民一人あたり一万円の国債を発行したとすると、国民はただ一万
円借りて手元にその一万円を置いていると言うだけのことになるか
らである。
するとどうなるか?
この一万円を今消費に回したとしても、近い将来に一万円+利子
分の消費を減らさなくてはならなくなる。だから消費は増えない。
減税による可処分所得の増加分は、結局将来の増税に備えて貯蓄
に回るだけ。あるいは今消費が増えても、将来はその分減る。
、、、ということになる。