世界利子率(r*)
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小国開放経済のモデルでは、「資本の完全(自由)移動性」を仮
定する。
すなわちこの国の住人や企業は世界の金融市場に完全かつ自由に
アクセスでき、政府は企業などの貸し借りに関して何らの介入も行
わないものとする。
そしてまたこの経済の影響で、世界の金利は上がったり下がった
りはしない。
つまりこの国の実質利子率rは世界利子率r*に等しい、、、とい
うふうに仮定する。
世界利子率r*を決めるのは、世界全体を一つの閉鎖経済と考えた
場合の世界の貯蓄Swと投資Iwの均衡である。
小国開放経済では、利子率は所与のモノ(given:自分では決めら
れないモノ)である。
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■小国開放経済モデルの前提条件(仮定)
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さてそれでは第三章のモデルを復習しながら、小国開放経済のモ
デルを立てていこう。
1)
まず経済の産出量Y(GDP)は、生産要素と生産関数によって
決定される(と仮定する)。
生産要素とは資本(土地や生産機械など)Kと、労働Lで、生産
関数とはこれらの生産要素を用いてどのくらいの生産が行えるかと
いう関数である。
生産関数をFとすると、
Y = F(K、L)
である。
2)
次に可処分所得Y-Tが増えれば消費は増大する(と仮定する)。
可処分所得とは、国民が受け取る収入Yから税金Tを差し引いた
もので、「消費に回してよい収入」のことである。
消費関数をCとすると、
C=C(Y-T)
となり、増加関数(カッコ内が増えればCも増える)である。
3)
実質利子率rが高ければ、投資は減少する(と仮定する)。
投資関数をIで表すと I=I(r) であるが、これは減少関数
(rが増えればIは減る)である。
で、ここで小国開放経済における仮定が加わる。つまり
4)
実質利子率rは世界の実質利子率r*に等しい。
すなわち r=r* である。
と言う仮定である。
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小国開放経済のモデリング
さてモデルの前提条件を確認した後で、国民勘定の恒等式に立ち
戻る。
純輸出NXを左辺に取ると、
NX=(Y-C-G)- I
= S - I
である。
これに上の2)から4)までの式を代入すると、
NX=(Y-C(Y-T)-G) - I(r*)
= S - I(r*)
となる。
第三章で述べたとおりGやTは政府が決定する「政治的要因」で、
ある一定期間固定されているモノである。
だから貯蓄Sも長期的には一定の範囲内に収まってしまうモノ
(定数)となり、ここで第008回の「利子率の均衡モデル」を引っぱ
り出して、ここに世界利子率r*を書き加えてみる。
図:IS-rモデル
r(利子率)
↑ S(一定)
| \ |
| \ |
r*|----------\--|
| :\ |
| : \|
r'|----------------\
| : |\I=I(r)
| : | \
0 ―――――――――――――――→I、S(投資;貯蓄)
←―→
NX:貿易黒字
閉鎖経済ではI=Sである均衡点に利子率rが決まることになる。
だがしかし小国開放経済では、世界利子率r*が所与のモノとして
経済の外部から与えられるから、この経済が閉鎖されていた場合の
利子率r'よりもしr*が大きければ、それだけ投資Iが減ることに
なる。
貯蓄S-投資I=貿易収支NXだから、
「小国開放経済において貿易収支NXは、世界の利子率r*に対応す
るSとIの関係によって決まる」
ということになる。