フリードマンの恒常所得仮説(復習)
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ミルトン・フリードマンは、消費者が定収入と臨時収入のバラン
スによって貯蓄を増やしたり減らしたりするのだ、とした。
これを「フリードマンの恒常所得仮説」という。
たとえば農家のように毎年の気候に応じて収入が天と地ほども変
わってしまうような家計であれば、当然保険料や貯蓄に回す金が増
えるだろう。
そして一方公務員のような月給もボーナス(期末手当)も決まっ
た額をもらえる職業であれば、貯蓄を増やす必要はあまりない。
だからフリードマンは、
「消費者の消費は、恒常的だと考える所得に比例する」
と考えた。
これを C=α × Yp と表現する(Ypのpはパーマネントのp)。
※ここでαは定数である。
フリードマンの消費関数をYで割ると、平均消費性向APCとなる。
APC = C/Y = α×Yp/Y
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■合理的期待と消費
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IS-LMモデルによると、減税は消費を増やし、増税は消費を減らす。
だがフリードマンの恒常所得仮説で考えると、その効果は一時的
な増減税と恒常的な増減税では異なることになる。
つまり一時的な減税は大して消費を増やさない。
また一時的な増税は大して消費を減らさない。
そして恒久的な減税は消費を増やし、恒常的な増税は消費を確実
に減らす。
このことは、ケインズの消費関数による予想を現実の経済現象に
当てはめても「当たったり、外れたりする」ということを意味して
いる。
ケインズの消費関数は「消費は現在所得の関数である」という仮
説に依っているので、人々が将来を予想して現在の消費水準を決め
るという場合には当たらなくなるのは当然といえば当然。。
その背景にはケインズの時代はまだ、貯蓄する余裕をもつ人々の
割合がまだ少なく、ハンド・ツー・マウスで生きる人々が大勢いた
からそういう仮説で十分であったということかもしれない。
人々が最適な将来を組み立てるために、あらゆる情報を利用する
という考えを「合理的期待の仮定」という。
たとえば半年後に増税が行われるだろうという報道があれば、
実際にそれが始まるまでに人々は自らの消費を修正する。
だから実際に増税が行われる前に消費は減るし、行われたすぐ後
はもう「折り込み済み」の消費水準になっている。
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恒常所得仮説によると、消費水準を決めるのは所得の恒常的な部
分の大きさに依る。
そして合理的期待の仮定によると、人々はあらゆる情報を利用し
て、最適な将来を組み立てる。
前者は消費水準が短期的な予想によっては変動しないことを表す
が、後者は突然の変動によって消費水準を変えるということを表す。
だからこの組み合わせは、予測できない変動「ランダム・ウオー
ク」を引き起こす。
だが現実は、そんなに変動的ではない。
たとえば貯蓄率は国や国民性によってかなり異なるが、それでも
そんなに変動しない。
貯金する人は常に一定額の貯金をするし、貯金しない人や貯金で
きない性格の人は結局貯金しない。
また所得を貯蓄に回せないような状況の人々の割合も多い。
そのような人の場合は平均消費性向も限界消費性向もかなり高い
が、下げようがない。
寝て食ってちょっと遊んでそれでお終いという生活だから、現在
所得によって消費水準が決まってしまう。
そういうわけで、恒常所得仮説が予測するほど将来所得は消費を
変動させず、現在所得の消費に与える影響は大きい。
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■まとめ
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現在の消費関数はケインズの考えたような単純な形、すなわち
消費 = F(現在所得)
ではなく、
消費 = F(現在所得、富、期待将来所得、利子率)
という四つの変数を持つ関数であると理解されている。