大不況、デフレ、ピグー効果
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大不況がなぜ起こったか、経済学者たちは未だに論争を続けてい
る。
大不況がなぜ起こるのか突き止められないと、大不況が起こる前
に手を打つことができないから、これは意味のある論争であると言
える。
大不況についての仮説をIS-LMモデルで考えてみる。
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■支出仮説:IS曲線へのショック
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1930年代の大不況(ヨーロッパの農作物輸入制限によってア
メリカの農業が輸出先を失い、物価の大暴落や株の大暴落を引き起
こした1929年からの不況。エンパイア・ステートビルを始めとする
マンハッタンの摩天楼は実はこの前あたりの時期にできた)は、所
得の低下と利子率の低下が同時に起こった。
だからこれはIS曲線への縮小的なシフトであった、という主張
がある。これを「支出仮説」と呼ぶ。
物価の暴落、株式の暴落
→不確実性(将来に対する不安)の増大
→投資が減り、貯蓄が増えた
→金回りが止まり、不況
銀行の倒産、
→投資可能な資金が減り、投資家が必要な資金を集めることができ
なくなった
その上、アメリカ政府は財政政策拡大より、均衡財政を目指した。
高失業率にもかかわらず「政府支出の即時的で思い切った減少」を
行い、租税率の引き上げを行った。
これらの事実がIS曲線を縮小シフトさせた、、というのがつまり
「支出仮説」である。
IS曲線というのは、
Y = C(Y-T)+I(r)+G
だから、政府支出Gの減少も、銀行倒産による投資Iの減少も、不確
実性の増大による消費減少も、増税による可処分所得の減少による消
費減少も、すべて所得&産出Yの減少を引き起こす。
利子率r
|\ \ /LM曲線
| \ ← \/
r*| \ /\
| \/ \
| /\ \
| / \ ← \IS曲線
|
―――――――――――Y(所得・総生産)
0 y* ← y
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貨幣仮説:LM曲線へのショック
アメリカの貨幣供給は、1929年から1933年までに25%も落ち込
んだ。
同時期に失業率も3%から25%(!!)に跳ね上がった。
このような四分の一にも及ぶ失業率の原因は、デフレにあるとい
う考え方ができる。
というのもこの間、物価水準も25%(!!)も落ち込んでいるから
である。
物価水準Pの下落は、実質貨幣残高M/Pを増大させる。
実質貨幣残高が増大すると言うことは、よりたくさんの財やサー
ビスを購入できるようになると言うことである。だからこれは拡張
的なLM曲線のシフトを発生させる。
★LM曲線:M/P = L(r、Y)
利子率r LM1(P1)
| \ / LM2(P2)
| \ / /
r*| \/ / 【P1>P2】
| /\ /
| / \/
| / /\IS曲線
|
―――――――――――Y(所得・総生産)
0 Y1 Y2
そうするとIS-LMモデルでは産出量Yが増えることになるの
だがーーー、そうならなかった。
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■ピグー効果
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この時代の古典派経済学者アーサー・ピグーは、物価水準の下落
が実質貨幣残高M/Pを増大させ、これは家計の富の増大を意味す
るから、消費者はより裕福感を得て支出を増やしIS曲線を右にシ
フトさせて産出量Yを増やすだろう、、と考えた。
これはつまり「物価が下がったら、消費者はたくさんモノを買う
から消費が増え産出量が増える」ということで、特に「ピグー効果」
と言う。
だがしかし、物価が下がれば産出量が増えるとは限らない。
農産物の消費量は国民の胃袋の大きさや食欲によってある一定の
範囲内に留まるし、衣料品だって日用雑貨だってそうである。
ユニクロが安いがカラーバリエーション豊かな衣料を売りまくれ
ば、ユニクロ自体は儲かるにしても他の店の高い衣料は売れなくな
る。
同じ量の衣料がより安い値段で売られるなら、総産出量Y(金額)
は当然減る。
物価が上がると人々はモノがたくさん買えなくなり文句を言うが、
物価が下がってもそれほどたくさん買わないから、結果的に産出量
Yは減って給料も減る、、、ということらしい。