予想されるインフレの影響
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インフレとは結局貨幣需要量と貨幣供給量のアンバランスによっ
て生じる問題である。
しかしインフレが起こると社会的には様々な費用がかかる。
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1)靴底コスト:
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たとえば高インフレは名目利子率を押し上げる。
名目利子率が高いと言うことは、貨幣を手元に持っているとドン
ドン財産が減る(貨幣の保有コスト=名目利子率)ということだか
ら、人々は本当に必要な最少限だけ貨幣を手元に置き、残りは銀行
などに預けておくことになる。
そうすると(極端に言えば)毎日銀行から必要なだけお金をひき
ださねばならないことになり、そのために費用が余計にかかる。
つまり週一回銀行に行くより週五回銀行に行く方が靴底が減るこ
とになるから、このような費用を「靴底コスト」などと呼ぶ。
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2)メニュー・コスト:
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またインフレが起こると、企業は生産する財やサービスの価格を
引き上げなければならなくなる。
そうなると販売店にその旨を伝えたり、値札やPOPやパンフレ
ットを新しくしなければならないから、そのための費用がかかる。
このような費用は「メニュー・コスト」と呼ばれる。
すなわちレストランがメニューの値段を替えるための費用である。
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インフレと資源配分、税収
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3)資源配分の非効率化:
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農産物などの商品は、毎日のように市場で取引をされ価格が調整
される。
だがしかし企業の生産する財やサービスの価格は、そう頻繁に調
整されないから、インフレがあっても値上げをするまでに何ヶ月も
何年も間が開いたりする。
すなわちその間は、ミクロ経済学で言う「均衡価格」とは違う価
格で市場に提供されていることになり、それは厚生経済学の基本定
理による「資源配分の効率化」が達成されないと言うことである。
これは共産主義国の統制価格経済を思い出すとわかるが、そうい
うわけで資源配分の非効率化が生じるわけである。
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4)税収への影響
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インフレは税収にも影響を及ぼす。
税制は基本的に名目価格に対して設定されるモノだから、インフ
レが起これば起こるほど税金がかかることになる。
たとえばキャピタル・ゲイン税率を10%としよう。
そしてある株式の一株の価格が100万円としよう。
一年間でもしインフレが全く起こらず、その株式の評価が全く変
わらなければ、その株の一株の価格は変わらず100万円である。
だからこの株を一年後、手放しても売買利益は0であるから税金
は0である。
だがしかしインフレがあれば、企業の業績が変わらなくても株価
は上昇する。
すなわち一株100万円の株式が、一株140万円(インフレ率40%)に
なったりするわけである。
そうすると実質的に株価は上がっていなくても、40万円の売買利
益が生じることになり、四万円のキャピタルゲイン税を支払わねば
ならなくなる。
これはインフレによる「余分なコスト」である。