経済政策と貿易収支
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■基本式(復習)
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国民所得勘定の恒等式を変形すると、
NX =Y-(C+I+G)
となる。
また国民貯蓄SとはGDPから消費Cと政府購入Gを差し引いた
モノでS=Y-C-Gであるから、これを上の式に代入すると、
S-I=NX
である。
このS-Iを特に「対外純投資」と呼び、S-I=NXの場合の
NXを特に貿易収支(トレード・バランス)と呼ぶ。
トレード・バランスとは、純輸出の別名であり、S-I=NX>0
の時が「貿易黒字(貿易過剰)」、S-I=NX <0の時が「貿易
赤字(貿易不足)」となる。
貿易黒字が生じたとき、対外純投資もプラスになっている。
貿易赤字が生じたとき、対外純投資はマイナスになる。
小国開放経済のモデルでは、「資本の完全(自由)移動性」を仮
定し、この経済の実質利子率rは世界利子率r*に等しい。
世界利子率r*を決めるのは、世界全体を一つの閉鎖経済と考えた
場合の世界の貯蓄Swと投資Iwの均衡である。
小国開放経済では、利子率は所与のモノ(given:自分では決めら
れないモノ)である。
である。
図:IS-rモデル
r(利子率)
↑ S(一定)
| \ |
| \ |
r*|----------\--|
| :\ |
| : \|
r'|----------------\
| : |\I=I(r)
| : | \
0 ―――――――――――――――→I、S(投資;貯蓄)
←―→
NX:貿易黒字
閉鎖経済ではI=Sである均衡点に利子率rが決まるが、しかし
小国開放経済では、世界利子率r*が所与のモノとして経済の外部か
ら与えられるから、この経済が閉鎖されていた場合の利子率r'よ
りもしr*が大きければ、それだけ投資Iが減ることになる。
貯蓄S-投資I=貿易収支NXだから、
「小国開放経済において貿易収支NXは、世界の利子率r*に対応す
るSとIの関係によって決まる」。
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経済政策と貿易収支
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■政策の変更と貿易収支
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まず貿易収支が均衡していて純輸出が0の場合を考える。
この場合は閉鎖経済と同じくI=Sになっている(ただし利子率
r=r*)。
ここでもし政府が政府購入Gを増やすとすると、S=Y-C-G
だから国民貯蓄Sは減少する。
一方小国開放経済では実質利子率rはr*で一定だから、投資Iは
以前と変わらず、当初I=SであったものがNX=S-I<0とな
って「貿易赤字が発生する」。
これをIS-rモデルで確認してみると、
図:IS-rモデル
r(利子率)
↑ S'← S
| \ | |
| \| |
| \ |
| |\ |
| | \|
r*|----------|----\
| | |\I=I(r)
| | | \
0 ―――――――――――――――→I、S(投資;貯蓄)
←―→
貿易赤字
となり、確かにそうである。
また政府が減税を行ってTを減らしたとする。
減税は消費を喚起するから国民貯蓄Sはやっぱり減少させる。
減税分のいくらかは民間貯蓄にまわって国民貯蓄を増やすが、一
方減税した分だけ公的貯蓄は大きく減るから、トータルでは国民貯
蓄Sは減ることになる。
そうなると政府購入Gを増やした場合と同様に「貿易赤字が発生
する」。